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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

金融庁、銀行にギャンブル依存症の人へ“細かすぎるカウンセリング”求める文書が波紋

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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 果たして、このような質問に対してギャンブル依存症の本人が正直に回答するだろうか。そもそも筆者には、銀行でギャンブル依存症の相談を行うというのが非現実的なものと思えるのだ。

自殺リスクまで見極める

 さらにマニュアルでは、例えばギャンブル等へののめり込みの状況を本人から聞いている際に、注意すべき発言がなされた場合、本人が自殺のリスクを抱えている可能性があるので、関係機関につなぐ際には担当者に自殺のリスクがあることを伝えることが適切だとしている。その注意すべき発言例として、以下のようなものが掲載されている。

(1)家族には、たくさんの苦痛を与えてしまった。家族にとっては私がいないほうがいいだろう。
(2)私は絶対によくならない。本当に役立たずだ。
(3)あまりにたくさんの問題を引き起こしたので、自分などはよい人生を送るに値しない。

 メガバンク行員はいう。

「ギャンブル依存症の人の自殺リスクを見極めることまで銀行に求めるのは、いかがなものか。これは、精神分析医やカウンセラーの仕事ではないのか」

 このマニュアルには、「相談への対応に際し、このマニュアルのとおりにしなければならないというものではありませんが、このマニュアルを参考としていただき、円滑な対応に努めてくださるようお願いします」との金融庁の注記がある。しかし、金融庁が作成したマニュアルであれば、銀行は従わざるを得ないだろう。筆者には、このマニュアルがギャンブル依存症の抑制につながるとは思えないのだが。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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