ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~一極集中を裏で支える東京の本当の実力

脱「若者の街」化する渋谷がハロウィンの若者で大騒ぎになる歴史的理由


 本音ではコスプレに眉をひそめる人たちも、共催しているハロウィンイベントに人が集まると、にんまりと微笑む。果たして、どちらが純粋なのだろうか。

神楽坂は「東京のまち遊び」のメッカ

 今度は、時計の針を少し先に進めよう。2018年11月3日。神楽坂通りに敷かれた長い紙に、誰もが自由気ままに落書きを楽しむ「坂にお絵描き」が人々の笑顔を集めていた。


 グラスを乗せたお盆片手にかけっこを競う「ギャルソンレース」。神楽坂の芸者さんを講師にした「ざ・お座敷入門」。そんな神楽坂ならではの催しが10月中旬からおよそ半月間にわたって続く、「神楽坂まち飛びフェスタ」のフィナーレを飾るメインイベントだ。

 坂と横丁が縦横に入り組み、訪れるたびに新たな発見とめぐり合える神楽坂は、古くから東京の「まち遊び」のメッカとされてきた。明治の時代に毘沙門天の縁日を飾った露店は東京の夜店の発祥と言われ、歩くことができないほどの人で賑わったという。夏目漱石の『坊っちゃん』で主人公が鯉を釣り逃し“赤シャツ”に鼻で笑われたという話も、神楽坂の縁日での出来事である。

「まち飛びフェスタ」を担うのは、「神楽坂が好き」という共通項だけで集まったボランティアたち。それ以上でも、それ以下でもない。

 若いころに勤めていた小売業で、「『門前市をなす』という言葉があるように、人が集まるからものが売れる。では、なぜ人が集まるのか。お賽銭を出してもいいと思えるご神体があるからだ」と教わった。なんだか禅問答のようでよくわからなかったが、今では少しわかるような気がする。

 神楽坂のご神体は、毘沙門さまか、坂道か、横丁か、粋なお姐さんか。どれでもなく、どれでもある。いわば、これらが混然一体化した神楽坂というまちそのものにある。

ハロウィン騒ぎの選択肢が「渋谷」しかない理由

 渋谷は東急がつくったまち。企業が用意した舞台の上で、あたかも自分たちが主役であるかのような錯覚を演出することで消費が生み出されていく。ハロウィンの渋谷でおどける若者は、みなこの「自称主役」たち。

 15年に上梓した『23区格差』(中央公論社)に、筆者はこう記した。だが、少し間違っていたのかもしれない。ハロウィンの夜に渋谷に集まる若者たちは、渋谷というまちこそが主役だということに気づき出しているのではないだろうか。

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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