ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~一極集中を裏で支える東京の本当の実力

脱「若者の街」化する渋谷がハロウィンの若者で大騒ぎになる歴史的理由


 ハロウィンの夜におばあちゃんたちが仮装して巣鴨に集まったとしたら、みんな、まずはお地蔵さまにお賽銭をあげに行くことだろう。若者たちはお賽銭をあげないが、「ご神体」と一体化することに喜びを求める。そこに一種の興奮状態がつきものであることを含め、これまた祭りの原点だ。

 そんな彼らにとって、選択肢は渋谷しかない。六本木のご神体は店の中にあるし、新宿はフォークゲリラと機動隊がガチンコでぶつかり合った、団塊の世代が若者だった頃とは異なり、今ではいろいろな要素が混沌とからみ合いすぎて、何がご神体だか判然としない。

渋谷のハロウィン騒動は“壮大な実験”の始まり

 かつて、野球の早慶戦後に慶大生は銀座に、早大生は新宿に繰り出すと言われた。まちには、そこをホームタウンとする人たちがいる。彼らはしばしば排他的だ。若者は特にこの傾向が強い。

 今ではすっかり姿を消したが、20年ほど前に渋谷を席捲していた「ヤマンバ」は、東急沿線の山の手に住んでいたから「ヤマ」との説がある。それは、まさにホームタウン。マスとして「若者のまち渋谷」のホームタウンを支えていた専門学校生も少なくなった。こうして渋谷は、より普遍的な、いわば「概念としての若者のまち」へと進化していった。要するに「ご神体化」だ。

 ハロウィンの混乱を前に、渋谷区長は「今後、有料化も選択肢のひとつ」というコメントを出した。気持ちはわからないでもないが、渋谷というまちとそこに集う人たちの活きた関係を考えると、いささか的外れと言わざるを得ない。

 神楽坂で夜店が始まったのは1887(明治20)年のこと。以来、およそ130年の長い時間をかけて、まちと人との関係が築き上げられてきた。夏に浴衣で神楽坂のまちを楽しむイベントをはじめ、さまざまな取り組みが神楽坂のまちを舞台にして繰り広げられ、その一つひとつが試行錯誤を経て「まち飛びフェスタ」へとつながっていった。片や渋谷のハロウィン騒動は、ここ数年の出来事。歴史はきわめて浅い。もっと長い目で見るべきだろう。

 今、渋谷で起きているのは人とまちとをめぐる壮大な実験だ。それは地方ではあり得ない、東京ならではの動き。そう考えると、ハロウィンの夜に渋谷に集まる若者たちにも、違った光が差してくるのではないだろうか。
(文=池田利道/東京23区研究所所長)

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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