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LIXILが陥った機能不全…創業家が不可解なCEO復帰、市場で経営不安が広まる

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 リクシルが公表した資料によると、指名委員会の招集に当たり、潮田氏は、瀬戸氏がCEOを辞任する具体的かつ確定的な意思を持っていることをほのめかす発言を行ったと考えられる。これは、指名委員会メンバーの誤解を招いた恐れがある。見方を変えれば、潮田氏は、自らに事情が良くなるように動いた可能性がある。ガバナンスが機能不全に陥っていたと考えられるなか、市場参加者が瀬戸氏解任に納得できないのは当然といえる。

市場参加者が懸念するリクシルの先行き

 国内の株式市場では、リクシルの先行きを不安視する投資家が増えている。すでに、株主(機関投資家)のなかには、瀬戸氏退任の経緯を詳細に説明するよう求めた書簡をリクシルに送付した者もいる。

 見方を変えれば、瀬戸氏の経営手腕を評価する投資家は少なくないということだろう。わたしたちは、冷静に同氏の取り組みを振り返るべきだ。瀬戸氏の解任を“プロ経営者挫折”の一例として論じるのは、あまりに早計だ。

 前CEOの瀬戸氏にとって、リクシルには海外での買収を行えるだけの組織力が備わっていないと映っただろう。ジョウユウの不正会計問題の発覚は、リクシルのデュー・デリジェンスがおろそかであったことの裏返しだ。リクシルは“性善説”の考えに基づいて、「不正はないだろう」と考え、海外戦略を進めてしまった。それは、あまりに無防備な考えだった。なぜなら、海外でわが国の常識が通用するとは限らないからである。

 この考えに基づいて、瀬戸氏は過去の買収を見直し、リスクを管理しやすい組織体制を目指した。市場は、この取り組みを評価した。それは、瀬戸氏在任中のリクシルの株価持ち直しを支えた一因だろう。プロ経営者としての瀬戸氏の手腕と成果の実現を期待する市場参加者は少なくなかったと考えられる。

 一転して、昨年10月末に瀬戸氏の退任が発表されて以降、リクシルの株価は下落基調だ。海外買収の失敗に起因する損失発生への対応途中で経営トップが交代したことの影響は甚大である。市場参加者が期待する経営とは逆に、リクシルは海外のリスクをとることを重視する方向に動き始めている。ガバナンスへの不安が高まるなか、同社がどのように経営のリスクを把握し、管理、抑制できるか、先行き不安が高まっている。

 今後、リクシルが投資家の理解を得られない場合、株主が取締役の再任に反対する可能性もある。早い段階で同社は、CEO退任の事実をつまびらかにし、市場参加者からの信頼回復に努めるべきだ。それが難しい場合、リクシルが多様なステークホルダーの利害を調整することは、難しくなるだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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