和暦使用部分を「特定済み」「調査・確認中」の企業に改修の度合いを聞くと(有効回答1289件)、「改修は必要ない」が185件で14.4%、「対応が必要」が497件で38.6%、「導入しているパッケージ製品のアップデートなど改修作業は軽微」が422件で32.7%、「改修の必要性は今後判断する」が185件で14.4%だった。

「他社とのシステム連携テスト」について(有効回答508件)は、「システム連携はしていない」が98件で19.3%、「実施する」が282件で55.5%、「連携テストは不要」が97件で19.1%、「今後検討する」が31件で6.1%だった。

 今回の調査で留意しなければならないのは、「やっている」企業の割合ではなく、「やっていない」の割合だ。すべての企業が「やっている」なら問題は起こらない。1社でも(1システムでも)対応しなければ、問題は全体に広がっていく。

 情報処理推進機構(IPA)が今年3月に作成した資料「改元への対応~あなたの会社は⼤丈夫?~」では、改元に伴うシステム改修のモデルとして、以下のスケジュールを示している(下図参照)。

(1)3月初めをメドに、和暦にかかわるプログラムとデータの特定、取引先との調整、改修計画を策定
(2)3月末までに、プログラムを改修、本番移行のリハーサル、ダミーデータを使ったテストなどを終了
(3)4月いっぱいで新元号「令和」を使ったテスト

 ただ3月は年度末、年度始めの人事異動や組織改編で企業のIT部門やシステム受託会社は、それどころではない。4月に入ってプログラムとデータの改修、本番テストというのが現実的なところだろう。経産省がアンケート調査を実施したのは今年1月28日~2月13日なので、多くの企業が和暦のプログラムとデータを特定する作業に集中していたときだ。20.1%だった「調査はこれから」が現在は1桁台に減少しているだろうし、新元号に対応するプログラム改修作業がいよいよ本格化しているに違いない。

新元号「令和」切り替え、“最悪の”システム大障害の恐れ…4割近くの企業が調査中・未調査の画像3情報処理推進機構(IPA)作成資料「改元への対応~あなたの会社は⼤丈夫?~」より

合字やフォントの問題もある

 では何をテストするのかというと、まずは今年5月1日以後の年次表記だ。「令」も「和」も当用漢字なので外字問題は起きないが、書類に表示する合字(「平成」などを一文字として表記)の問題がある。Unicodeで新元号の合字は「U+32FF」が割り当てられることになっているが、フォントメーカーから「令和」の合字が出そろうにはしばらく時間がかかりそうだ。

 サーバーが処理したデータの年月日をWindows系のPCやプリンタがきちんと表示するか、文字化けが起きないかなどを確認する必要があるのだが、企業のIT部門やプログラム改修を受託するITベンダーは、ソフトウェア・パッケージ製品の新元号対応や合字フォントのスケジュールに合わせるしかない。ITの世界では、「テストに一発OKはない」と言われるので、IT関係者は改元実施ギリギリまでテスト、テストに追われることになる。

 もうひとつは、コンピュータが「2019年」「平成31年」「令和元年」「令和1年」を同じ年と認識するかどうかだ。M/m、T/t、S/s、H/h、R/rを明治、大正、昭和、平成、令和と識別するかも要チェックだ。ここをちゃんとクリアしないと、ビッグデータは雑音だらけになって、使いものにならなくなる。

 アンケートを実施した経産省に取材すると、「大きなトラブルが発生する可能性は高くない」と言う。「Y2Kのときのように、大山鳴動して……になってほしいのが本音」と言う。システム改修のせいで電車が止まったりすればテレビの情報番組は大騒ぎするだろうが、常識的な人はトラブルの発生を期待するはずがない。何も起こらないに越したことはないのだが、対策を講じるには「最悪の事態」を想定しなければならない。

給料や年金が振り込まれない?

 
 では、どのような事態が想定されるかを探ってみよう。
 
 経産省やIT系業界団体の話を総合すると、ひとつはネットワークを介したデータの受け渡しで問題が生じるケースだ。新元号対応済みのシステムと未対応システムとの間でデータの受け渡しができなくなる。データが届いても、「昭和31年」や「平成元年」の「処理済み」データに格納されてしまうかもしれない。発注データの未達で部品や材料が届かなければ、メーカーは生産できなくなり、店舗は開店休業を余儀なくされる。

新元号「令和」切り替え、“最悪の”システム大障害の恐れ…4割近くの企業が調査中・未調査の画像4情報処理推進機構(IPA)作成資料「改元への対応~あなたの会社は⼤丈夫?~」より

 もうひとつは、代金の決済や給与の振り込みで問題が生じるケースだ。金融機関の多くは通帳を西暦で印字するようになっているが、資金振替のシステムは意外にも和暦で動いている。踏み込んで調べていくと、全国の銀行、信用金庫などをネットワークで結んで資金決済を行う全国銀行データ通信システム(全銀システム)が和暦で動いているらしいことがわかった。

 経理システムから取引先金融機関に送信した振替・振込依頼のデータが、全銀システムでリジェクト(差し戻し)されたり誤読されたら、代金の決済ができなり、モノも動かず、カネも動かずとなる。

 これと並んで「ヤバい」のは、年金保険料の徴収と支給だ。金融機関の決済システムだけでなく、年金システムの誤動作が重ならないとも限らない。永田町関係者は、「そうなれば、政権に激震が走る」と言う。そのあたりは内閣官房に設置された「新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議」がチェックしているのだが、「消えた年金」「データ入力業務の中国流出」が記憶に新しい。国民の信頼回復に向けて、厳重・厳密な運営に努めてほしい。
(文=佃均/フリーライター)

関連記事

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ