自民の有力府議が討ち死に

 今回、橋下が表に出ずに勝利したことは大きい。吉村は聴衆を前に「『橋下がいなくなって(維新は)終わったんでしょ』とばかり言われた。全然違うじゃないですか」と叫んだ。

「維新」を連日、ニュースの見出しにさせてきた目論見通り、府議選は過半数突破、市議選は過半数へあと2人に迫る大躍進だった。他の会派から2人取り込めば両議会でも都構想へ「GO」となる。

 一方、「春の維新嵐」で自民の有力市議や府議も次々と討ち死にした。なかでも自民大阪府議団幹事長である花谷充愉(56)が維新の新人に敗れたのは、大阪自民には衝撃だった。

 この異常事態を招いたのは公明党だ。法定協議会の最後こそこじれて物別れになったが、議会で公明票を取り込もうとした維新に迎合していた。現在、公明党の全国の衆院小選挙区の当選者8人のうち4人が大阪だ。公明党にとって大阪は重点地区。だからこそ前回衆院選で橋下が狙い「候補を立てるぞ」と脅して、都構想の住民投票実施に賛成させていた。大勝を受けて橋下はテレビで早くも「(選挙区に)全部立ててゆく。エース級の準備ができている。公明党を壊滅させる」と脅し、吉村も「公明党の協力が得られないなら、候補を立てない理由はどこにもない」と鼻息荒い。

うまく立ち回った公明党

 恐れをなして今後、維新になびく可能性が高いのは公明党だけではない。自民党にも「都構想賛成」へ転じる地元議員が出てくる可能性がありそうだ。元大阪府議のジャーナリストの山本健治氏は「今後、明確に賛成としなくても、自民が公明のように都構想にすり寄ってゆく可能性も高い」と話す。公明党については「佐藤(茂樹)府本部代表が『民意が示されたので…』などと話しているように、実は公明党は保険をかけて、本当に維新と刺し違えないようにうまく立ち回った」とみる。

 事実、山口那津男代表も京都や兵庫に応援演説に入りながら、肝心の大阪入りしていない。山本氏は「今後も維新は公明を揺さぶり続ける。いずれにせよ、大阪が停滞していたなか、有権者は維新が改革派の受け皿と勘違いしてしまった」と話す。勘違いさせた維新の見事な吉本興行流の「芸と仕掛け」だった。
(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト、敬称略)

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