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ジャパンディスプレイ、5期連続赤字で経営危機…戦略なきiPhone依存経営の失敗

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 近年、世界のスマートフォン市場では、中国メーカーの台頭が著しい。その上、モバイルデバイス市場では有機ELパネルへの注目が高まっている。

 JDIはこうした変化に対応することよりも、アップルとの関係を優先した。2015年春、同社はアップルからの要請を受けて石川県の白山工場の建設に着手し、2016年秋からのiPhone向け液晶パネルの供給稼働を目指した。

JDIが陥った古典的な経営の失敗

 
 白山工場の完成が近づくなか、JDIは想定外の事態に直面した。iPhoneの販売台数が伸び悩み始めたのである。アップルは生産計画を下方修正し、JDIも工場の稼働を一部停止した。これがJDIの資金繰りを急速に悪化させ、同社は資金支援が必要な状況に陥った。

 2016年12月から同社は中国メーカーの需要を取り込み、白山工場の稼働を開始した。それでも、同社の資金繰りは安定しなかった。アップルからの受注が減少すると経営が成り立たないほど、JDIはiPhoneの販売増加を念頭に置いて経営を行っていたということだ。

 見方を変えれば、JDIには、組織を一つにまとめ上げ、新しい取り組みを進める経営者がいなかった。企業の実力は、組織を構成するヘッドカウント(従業員数)に、個々人の集中力を掛け合わせたものと考えることができる。経営者は、個々人の能力とやる気を引き出し、永続的な成長を目指すために、戦略を立案し、執行しなければならない。戦略とは、環境の変化に適応しつつ、企業がより大きな付加価値を獲得するための方策、措置のことである。このように考えると、JDIは経営に必要な人材を確保できず、戦略なきままに事業を進め、業況が悪化したといえる。

 それは、“古典的な経営の失敗”といえる。本来であればJDIの経営陣は、モバイル分野での成長が頭打ちとなるなか、車載分野など新しい収益源を開拓しなければならなかった。また、同社は有機EL分野での競争力を引き上げる必要もあったはずだ。

 JDIの経営陣も口頭ではそうした認識を示してはきた。ただ、実際の取り組みは思うように進まなかった。背景には、新しい分野に進出するリスクをとるよりも、アップルとの協力関係を優先したほうが経営の悪化を抑えられるという発想があったのだろう。

 この結果、JDIでは、非モバイル分野の成長戦略の執行が遅れてしまった。JDIは有機EL開発を手掛けるJOLED(ジェイオーレッド)の子会社化も撤回せざるを得なかった。さらに悪いことに、JDIは中国企業の攻勢を受けたパネル単価の下落にも直面している。2019年3月期まで5期続けてJDIは赤字に陥る見通しだ。

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