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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

プロ野球、昨年の観客動員数が史上最多に…娯楽施設化する球場、ファン以外も楽しめる

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季

 以前、とある球団職員に話を聞いたところによれば、「球団側は勝敗をコントロールできないから、買っても負けても『来てよかった』と思わせる企画を考えることが最近の球団経営の基本」と話していた。各球団の観戦リピート率も多く、多くの球団がこれを実施できているといえそうだ。

地域、立地を生かしたグッズ展開やイベントの企画も急増

 
 さらに、あまり興味がない人を引きつける大きなツールが“球団グッズ”。リーグ優勝した16年以降、2年連続グッズ収入が50億円を超える広島カープは、女性や子供ファンが思わず買いたくなるような個性豊かな商品ラインナップだ。

「市民球団である広島カープは、おばあちゃん、お母さん、娘、孫娘とつながっていく親子4代のカープ女子を顧客にすると明確に規定しており、各世代の女性が喜ぶかわいいグッズの展開といったターゲティングが上手な印象です。プロ野球が日常となっている関西の球団の阪神では、応援グッズを揃えたファンには生活系グッズの需要があるとの計算から、バッグや帽子、キャンプ用品、ランドセルなどにも手を広げているのもいい戦略だと感じますね」(同)

 また、会社員が仕事終わりに訪れることの多い平日の神宮球場(東京ヤクルト本拠地)では、会社員が喜びそうなビール半額キャンペーンや「神宮からあげ祭」といったグルメ系のイベントを積極的に企画し定番化している点も地域や立地の特色を生かした球団経営の好例だ。このように、コアファン以外の層をいかに球場へ足を運ばせるかがカギなのだ。

本当の人気球団になるためには?

 しかし、そもそもスポーツ観戦ビジネスに対して、なぜここまで各球団の姿勢が変わったのだろうか。

「今までのプロ野球はただ野球を見せているだけでよかったのですが、娯楽の多様化した現代では、その発想で生き残ることが難しくなってしまいました。それに、それまでのプロ野球球団というのは、あくまで親会社の宣伝媒体というイメージが強く、球団経営だけで利益を出す必要がないと考えられていました。しかし、親会社の経営難で球団が手放される例が過去に何度もあったことから、今は独立採算で球団を運営するべきという意識が強くなったからではないでしょうか」(同)

 かつて球団職員の管理職には親会社から出向してきた人も少なくなかったようだが、今では欧米などでスポーツビジネスを本格的に学んだ人材がその役職についている球団は珍しくない。球団経営は、事なかれ主義から脱却し、積極的にヘッドハンティングを行って斬新な企画を次々と考案しなければ、本当の意味での“人気球団”にはなれない時代に突入しているのだろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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