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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

『君が代』、“国歌”は誤訳?特殊なメロディーの秘密

文=篠崎靖男/指揮者
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 この5音音階は沖縄民謡でも聞くことができますが、東アジア、東南アジアでもよく使われています。そして、なぜか遠くスコットランドやアイルランドの民謡にも使われているのです。余談ですが、西洋音楽を日本に普及しようとしたアメリカ人音楽教育家、ルーサー・ホワイティング・メーソンがスコットランドやアイルランドの民謡を日本の子供たちに教えたのは、できるだけスムーズに、今まで西洋音楽を知らなかった日本人に伝えようとしたからです。年末の『NHK紅白歌合戦』の最後に歌う『蛍の光』も、メーソンによって伝えられたスコットランド民謡です。

 ところで、日本人によって作詞・作曲された『君が代』が、1903年にドイツで行われた「世界国歌コンクール」で1等を受賞していると聞かれたら、皆さん驚かれるのではないでしょうか。

 僕は海外で2度、『君が代』を指揮しました。海外で、相手国の方々全員に起立していただき日本の国歌を指揮するのは、日本人として誇りに思う特別な時間です。平安時代から続く日本の伝統芸術を結集し、世界で一番短い国歌でありますが、とても深い意味を持った日本らしい国歌です。

『君が代』の「君」が天皇陛下を連想させることに対して、複雑な思いを持つ方もたくさんいらっしゃることは理解していますが、天皇陛下も含めて、すべての日本人が“千代に八千代に”平和に過ごしていくために、努力を惜しまないための“ナショナル・アンセム”だと僕は思っています。

 今上天皇陛下が、退位なさるにあたり「平成が、戦争の無い時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」とおっしゃられた意味を心に留め、「令和」になっても、その後も、我々日本人が“平和”を守っていかなくてはならないのだと、『君が代』は伝えているのです。
(文=篠崎靖男/指揮者)

●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。ジャパン・アーツ所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

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