ジャパンディスプレイの呆れた経営…なぜ潰れる寸前まで危機に気づかず中国企業傘下入り
危機感もマーケティング能力もない
もう一つ、大企業連合はなぜうまくいかないか。大企業幹部も従業員も、財務部門以外の人たちはのんきで、会社が潰れることをまったく想像できない危機感ゼロの人たちが多い。例えば、1999年にNECと日立製作所のDRAM部門が合併してできた、エルピーダメモリでは、合併直後から減収減益、ゼロ投資であったため、業績は毎年200億円の赤字を3年続け、年ごとにじり貧になっていった。2000年のITバブルがはじけた後でも海外のDRAMメーカーは着実に成長していた。
エルピーダはもはや潰れる寸前、という2003年に、社長に招聘された坂本幸雄氏は、1年目に150億円の黒字に転換させた。坂本氏が経営陣を見て最初に驚いたことは、赤字が続き会社が潰れる寸前だというのに、役員はゴルフの話ばかりしており、出張するときはファーストクラス、会社をどうするというアイデアをまったく出してこなかったことだ。
結局、坂本氏は多くの役員に元の会社へ帰ってもらったが、そのうちの一人は、「坂本氏は血も涙もない奴だ」と述べていた。会社が潰れる寸前にゴルフの話しかしない役員のほうがよほど罪つくりである。会社が潰れると多くの従業員が路頭に迷うことになるからだ。
一般に大企業は、中小企業よりも待遇が良い。出張する場合でも出張手当、宿泊手当などが支給され、グリーン車やファーストクラス、ビジネスクラスが使えかなり恵まれていた。これに対して、中小企業や外資系企業は出張手当なしで、すべて実費精算、飛行機はエコノミークラス、というところが多い。米大手通信ネットワーク機器メーカーのシスコシステムズ社のCEOであったジョン・チェンバース氏は、日米を安売りのエコノミーチケットで往復していた。この話を聞いた東芝OBのある方は、こんなケチな会社には誰も行かない、と筆者に述べた。
また、大手メーカーはマーケティング能力も乏しかった。JDIはiPhoneの液晶に使われたため、一時大いに潤っていたが、これもたまたまJDIが受注しただけにすぎない。JDIが液晶パネルをアップルに供給する前は、アップルはサムスンから調達していた。しかし、両者がスマートフォン開発を競い、しかも知的財産権をめぐり法的な争いになったときに、アップルはサムスン以外の液晶メーカーから液晶を調達する方針に変えた。そこにJDIがいた。自ら積極的な売り込みをアップルにしたわけではない。JDIがアップル以外のスマホメーカーとの取引をほとんど獲得できなかったことが、それを物語っている。