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津田建二「IT/エレクトロニクス業界の動向」

ジャパンディスプレイの呆れた経営…なぜ潰れる寸前まで危機に気づかず中国企業傘下入り

文=津田建二/国際技術ジャーナリスト

液晶エンジニアは、力を発揮できる企業へ転職すべき

 また、大企業は素早く変化に対応できないことも、ITビジネスには向かない理由として挙げられる。iPhoneがX以降に液晶から有機ELに変えたときに、JDIは対応できなかったことがその証である。スマホビジネスでは、素早く動けなければ絶対に勝てない。日本の大企業同士が共同で立ち上げる事業がうまくいかないのは、トレンドや顧客への対応が遅すぎるからだ。会社の組織では、承認をもらうハンコの数の多いことはいうまでもない。

 液晶市場で生き残るためには、むしろ会社の規模をもっと小さくすることで、クルマのダッシュボードや工場、プラント、電力会社などの産業用途を狙うほうが着実で、緩慢な体質でもやっていけるのではないか。

 ITではTime-to-Market(製品化までの時間)、Agility(俊敏性)、Flexibility(柔軟性)、Expandability(拡張性)、Resilience(すぐに回復できる能力)などの言葉がよく使われる。とにかく素早く対応できる体質が最優先だが、日本の大企業同士の連合では、動きの早いIT産業でビジネスするのは無理だと思う。スマホのような動きの早い分野に、大企業同士を無理にくっつけて液晶部門を延命させた経済産業省が、IT産業のこの特質を知らないはずはない。経産省の責任も大きい。

 このように書いていくと、「後出しジャンケンだ」という声が出るかもしれない。しかし、ローテクになった液晶にしがみつくのではなく、テレビやAV機器と同様、捨てることも重要であろう。今回の台中連合への譲渡に近い出資受け入れに対して、日本は液晶を捨てたという見方もある。液晶エンジニアは、液晶開発を続けたいのであれば、開発を続けられる中国企業などへ移ればよい。あるいは液晶ディスプレイで培った技術を持って、新たにフレキシブルエレクトロニクスや、ウェアラブルエレクトロニクスに向かう手もある。要は、自分の力を発揮できなくなるなら、できる企業へ転職すればよい。責任をとらない役所に頼ってはいけない。
(文=津田建二/国際技術ジャーナリスト)

参考資料
1.液晶は今やローテク(2015/5/18)

津田建二/国際技術ジャーナリスト、「News & Chips」編集長

津田建二/国際技術ジャーナリスト、「News & Chips」編集長

国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル(現日経BP)、リードビジネスインフォメーションと技術ジャーナリストを30数年経験。その間、Nikkei Electronics Asia、Microprocessor Reportなど英文誌にも執筆。リードでSemiconductor International日本版、Design News Japanなどを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。
News & Chips

Twitter:@kenjitsuda2007

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