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松本典久「山手線各駅停車」

ビール「エビス」から生まれた恵比寿駅の秘密…貨物駅からお洒落な街の駅へ変貌の歴史

文=松本典久/鉄道ジャーナリスト

 ちなみに6扉車の存在はホームドア導入にとっては障害になることから、ホームドア導入に先駆けて一般的な4扉車に組み替えられていった。その結果、山手線では2011(平成23)年9月までに全編成全車両の4扉化が完了している。

 こうして車両側の体制が整えられたことにより、恵比寿駅では2011年10月29日から7・10号車部分にもホームドアが設置され、JR東日本ホームのホームドアモデル駅(目黒駅も同時に竣工)となった。その後、この知見を活かして各駅にホームドア設置が広がっていった。

ビール「エビス」から生まれた恵比寿駅の秘密…貨物駅からお洒落な街の駅へ変貌の歴史の画像3恵比寿駅西口の恵比寿像

貨物専用駅として開業

 駅ホームの発車ベルは、単なるベル音ではなく、メロディを使っているところも多い。恵比寿駅の発車メロディは、クラシック映画ファンにはお馴染みのイギリス映画『第三の男』のテーマ曲をアレンジしたものだ。劇中の音楽はオーストリア人の音楽家アントン・カラスが民俗楽器「ツィター」で演奏していたが、発車メロディではその軽快なメロディがうまくアレンジされている。

 なぜ恵比寿駅に『第三の男』なのかというと、この曲が1990年代後半から「エビスビール」のコマーシャルに使われたのが縁だった。恵比寿駅とエビスビール、「えびす」という名前だけのつながりと思いきや、そこには深い歴史があるのだ。

 山手線のルーツとなる品川~赤羽間の鉄道(日本鉄道赤羽線)が開通したのは、1885(明治18)年3月1日のことだった。ただし、当時の途中駅は、目黒、渋谷、新宿、板橋だけで、恵比寿駅はなかった。

 その2年後、現在のサッポロビールの前身となる日本麦酒醸造会社が創立した。翌年には醸造所も完成、1890(明治23)年に製品第一号となる「恵比寿ビール」の発売を開始した。ブランド名となった「恵比寿」は、七福神の一人で、漁業や福の神として知られている「えびす」にちなむもの。表記は夷、戎、胡、蛭子、蝦夷、恵比須、恵比寿、恵美須などいくつもあるが、ビールのブランド名は「恵比寿」(戦後、「エビス」に改称)の文字を使用した。

ビール「エビス」から生まれた恵比寿駅の秘密…貨物駅からお洒落な街の駅へ変貌の歴史の画像4恵比寿ガーデンプレイス

 売れ行きは順調に伸び、1895年には新たな土地も取得して工場を拡大する。その場所は、恵比寿駅の南東、現在「恵比寿ガーデンプレイス」となっている場所だ。当初、製品は馬車などで運ばれていたが、生産量が増えてきたところで鉄道利用に輸送力を拡大することになった。同社は日本鉄道と交渉、この地にビール輸送用の貨物駅を設置させることに成功した。かくして、1901(明治34)年2月25日、貨物専用の駅が開業したのである。

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