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杉江弘「機長の目」

ボーイング最新航空機で墜落多発、ANAが導入決定…パイロットの操作性を無視した設計

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 ボーイング機の事故が続いているが、エアバス機でも深刻な失速(コンプリートストール)に入ると代替制御則の下では操舵がきかないと思われる事故が続いている。09年に大西洋で海に墜落したエールフランスのエアバスA330の事故や15年末のエアアジア機のA320の事故で、最後になぜパイロットが失速から回復操作ができなかったのかを知っているパイロットは、私の知る限りではほとんどいない。それでも平気で今日も多くの同型機が運航されているのだ。

メーカーによる無定見な自動化と航空会社の責任


 ライオン航空のCEOは737MAXに不信感を持ったため、発注済みの190機のキャンセルを検討中と発表し、同じ国のガルーダ・インドネシア航空も発注残の同型機49機すべてのキャンセルを決めた。当然のことであろう。

 では、今年1月に同型機の導入を決めた全日空(ANA)はどうするのか。私は、今回の失速防止自動化システムそのものをやめない限り導入はしないほうがよいと忠告したい。なぜならボーイングが今後いくらAOAセンサーや警告システムの改良などに手をつけても、失速からの回復で水平安定板が自動的にしかも連続的に動くシステムは存続させると思われるからだ。

 そこを改修しようとすると大きな設計変更になり、莫大な費用と時間がかかり、耐空性の審査のやり直しも必要となってくるだろう。となるとセンサーのトラブルの確率こそ少なくなっても、またいつどこでこれまでのような事故が起こるとも限らない。パイロットに訓練を追加したところで、離陸直後など間一髪の判断とアクションが必要なところでは必ずうまくいくという保証もない。

 それにしても、なぜ航空会社は新しい航空機のことをよく調べもしないで購入するのか。航空機メーカーは、ユーザーである航空会社やパイロットの意見や要望を聞いてから設計するのではなく、いわば一方的に製造し、パイロットはそれに慣れるしかないという現実がある。一方、たとえば日本の鉄道車両の場合は、まず鉄道会社がスペックを決め、それを車両製作会社に発注する。しかし、航空の場合はそうではない。

 航空会社は新しい機種の選定にあたって考慮するものは、座席数、航続距離、それに燃費くらいのもので、操縦システムの細部まで理解して決定しているとはとてもいいがたい。大手の航空会社には安全部署や技術スタッフがいるのに、何をしているのかと言いたい。

 パイロットが新機材の操縦システムに大きな変更があったにもかかわらず、それを知らないで操縦してもいいのか、多くの航空会社では、737MAXに関する事前学習において、今回問題となっている新システムについてシミュレーターでの訓練を行っていなかったという。航空機の自動化は本来パイロットの負担を軽減するもので、パイロットとバトルするものではない。

 ボーイングは3月27日になって航空会社のパイロットや技術者、それに航空当局らに説明会を開き、737MAXについての今後の改修点を説明したという。そのなかでは「システムによる自動制御よりもパイロットの操縦を優先するようにソフトを修正する」という内容も含まれているといわれているが、今さら何をかいわんやである。

 世界の航空関係者は、トランプ大統領が発した「正論」を契機に、自動化の正しい進め方について議論を始めるべきである。ライオン航空機とエチオピア航空機の事故は、パイロット自身も一体何が起きたのかわからないまま海面や地面に激突したという今までに経験したことのないもので、計346名の乗客乗員の無念さを考えるとその責任は重い。
(文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長)

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