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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

“映える写真”至上主義=自己愛過剰消費へのシフト…「平成」消費読み解き総括

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自己愛過剰消費の拡大

 
 こうした社会背景の中で自己愛過剰な消費者が増加した結果、消費は自身にとっての意味が最も重視され、自身の経験価値の獲得が強く希求されるようになった。例えば、「自分へのご褒美」という言葉に端的に表れているような、自分が自らを好意的に評価するシチュエーションの演出に注力するための消費が拡大していったと考えられる。

 そのなかで、特に平成という時代の中心的な世代であるデジタル・ネイティブ世代の特徴は、「所有」を第一義には考えず、「使用」を重視するという傾向である。これは、アナログ世代の昭和世代がモノ消費に注力していたことと対照的に、平成世代がコト消費を重視して大人になってきた時代背景と関連している。

 平成世代は、インターネットへの接続が常識であり、SNSの普及の中では他者と所有物の重複は避けられず、所有物で優越感を獲得することは困難になったと「悟った」世代と目されている。したがって、モノは自己の欲求を満たすための「手段」でしかなく、レンタルやシェアで済ませたり、使用後にオークションで再販売したりすることに対する抵抗感を持たないという価値観が浸透した世代であるといえるであろう。

 その結果、個々人の「体験」が他者への優越を生じさせる手段へと転化し、端的にはいわゆる「映える」場所で証拠写真を撮ること、そこで自分が楽しんでいると思い込むことでの「自己陶酔感」が消費の原動力となるマインドへとシフトしてきたととらえることができる。このようななかでの消費という行為では、自身の生活や人生にとっての意味付けが最も重視されるようになったと解釈できる。

令和時代の消費…コト消費の流れは変わらず

 令和時代の消費のトレンドは、引き続き経験に価値を置くコト消費が重視される流れは変わらないと思われる。ただし、優越感を満たしたいという欲求のベクトルは、体験の稀少性が実感できる空間やイベントなどにさらに向かう可能性が高いと考えられる。結果として流行する事象に対する消費者の興味は、これまで同様移ろいやすいであろうが、その深層心理に備わる前述の自己愛の充足への希求は続くのではないかと思われる。

 一方、モノ消費は選択眼がさらに厳しい時代へと突入し、高関与な消費では個々人の期待に応えるストーリーが込められた製品のみが求められる傾向が強まると考えられる。こうした時代のマーケティングは、決め打ち的な押し付けでも、単調な多くの選択肢の提示でもない「厳選された提案ができる仕組み作り」が求められるのではないであろうか。

 消費は、時代が移り変わっても尽きることなく人間が興味を持ち続けるテーマである。それに対応するための企業のマーケティングも、滞ることなく進化していくであろう。この連載では、今後も日本を読み解くことができるように世相をウオッチしていきたい。
(有馬賢治/立教大学経営学部教授)

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