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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

孫はこうして「アポ電」の“加害者”になった…特殊詐欺の手口はここまで巧妙に!

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保険をつかった手口


 こうした活動が奏功したのが、今回のA子さんの例となる。A子さんを担当する営業所では、普段から特殊詐欺防止のための啓発活動に注力していた。特殊詐欺だと直感したA子さんは、「本当にCさんでしたか? 念のために確認されたらいかがですか?」とB子さんに伝えた、しかしB子さんの自尊心を傷つけたのか、「親がわが子を間違えるはずはない!」と逆ギレをされてしまった。

 不審に思いながらA子さんは上司に相談をしたところ、上司も“息子”の電話に違和感を覚えたようだ。保険会社としては、いくら契約者からの申し出といえども、詐欺の疑いがあれば契約者貸付の手続きはできない。困り果てている時に、A子さんは、あることを思いついた。

 A子さんは、以前B子さんからCさんの弟であるDさんを紹介していただき、生命保険に加入していただいたことを思い出したのだ。上司と相談の上、A子さんはDさんと連絡を取った。驚いたDさんは、さっそくCさんに連絡。あわや特殊詐欺に引っかかる寸前で、回避されたのだ。CさんからB子さんに事実を告げるときも、A子さんはCさんと話し合い、少しでもB子さんのショックを和らげ、聞く耳を持ってもらうために「すごく声が似ていたんだろう。間違えたのも当然だと思うが、心配かけさせて悪かった。最近、顔を見せに行ってなかったから、近いうちに行く」と配慮も忘れなかった。後日、Dさんの勧めでB子さんは警察に通報し、犯人逮捕へとつながった。

自分の孫が加害者に


 高齢者が想像したくないことではあるが、自分の孫が加害者になる可能性もゼロではない。

 今から15年ほど前、筆者は、アポ電に加担した加害者少年Xの弁護士から話を聞いたことがある。小さい頃から元気いっぱいだが、勉強が嫌いなXは、いわゆる“やんちゃ”な少年だった。けれども人を笑わせることが好きなXは、同世代の男女から人気を集めていた。中学生になると、同じようなタイプが集まって、放課後は自転車でいろんなところに出かけるようにもなった。思春期の子供は、大人の世界に憧れがちだ。背伸びした無謀さは、時として悪への道や不幸を招く。

 Xも友達同士でつるむうち、よく立ち寄るコンビニで顔見知りのお兄さん(Y)に出会った。最初は挨拶を交わす程度が、顔見知りになるにつれ、言葉も交わすようになった。10歳年上のYは、Xに優しく接してくれ、いろんなことを教えてくれる“憧れの大人”として、Xには映った。やがて、YがXに食事をおごってくれるようになり、Yとの時間は、Xにとっては楽しいひと時となった。「自分自身を一人前の大人として見てくれている」とXは、ひそかに喜んでいた。3回目の食事をした時、Xは「毎回、申し訳ないので結構です」と断ったが「いいから」と押し切られて、その後も食事を重ねた。

 何度目になっただろうか。ある日突然、いつもとまったく違う態度のYにXは、戸惑った。「いつまで調子をこいてんだよ。いくらになると思ってんだよ。そろそろ金を揃えてもって来る頃じゃないのか!」と、凄みのある目でXに迫った。「え? 『いいから』ってYさんは言ってませんでしたか?」とおずおずとYに言うと、は「なんだと、この野郎」とXにパンチを浴びせた。「利息を付けて30万だ! 返す当てはあんのかよ」と言われて、Xはパニックになり、もはや何がなんだかわからない。親や友人に相談することも思いもつかないXは、「すみません。ありません。許してください」と土下座をした。

 当然、そんなことで許すはずもないYは、「なら、手伝いな!」と有無を言わさずに、首都圏近郊の都市にあるマンションの一室にXを連れていった。そこには同年齢の少年が、ほかにもいた。Xは、その日から逮捕されるまで電話帳を見ながら、一日250件の家に電話を掛ける特殊詐欺の“息子役”を演じることとなった。Xの弁護士は語る。

「恐らく、最初からYは詐欺グループに引き込もうとXを狙っていたんだと思います。その後のXですが、罪を償って社会復帰しましたが、被害者の方に『申し訳ない』という気持ちは、ずっと持ち続けているようです。Xの両親は、祖父母に『アポ電には気を付けて』とかねてから言っていたそうで、祖父母がXを可愛がっていることもあり、さすがに自分の子どもが加害者になっているとは言えなかったようです。一時はひどく落ち込んでいたXですが『二度と悪事に手を染めない』と、誰一人知り合いのいない遠く離れた土地でまじめに人生をやり直しています」

 加害者のなかには、Xのような例もあることだろう。Xにとって毎回ごちそうになった“美味しい食事”は、“転落のきっかけ”となった。遠くから自分を見守り続けている人の存在を忘れずにいてくれていたらと思う。

 高齢の方は、いつ被害者になるかわからないと同時に、家族が加害者側になる可能性もゼロではない。どちらになっても経済的損失と心のダメージが付きまとう。被害者にも加害者にもならないためには、今一度、冷静になって判断していただきたい。「STOP THE 振り込め詐欺」を心の底から願っている。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表、保険・介護・相続ジャーナリスト)

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