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1日1時間睡眠…壮絶な三つ子育児の実態 うつ罹患の母親が次男殺害、実刑判決が議論呼ぶ

文=林夏子/ライター
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 こういった多胎妊娠に特化した妊婦教室は全国に広がりつつあるものの、被告が参加できたのはひとりの赤ちゃんを出産する妊婦向けの教室で、多胎育児についての指導は受けられず、不安なまま出産を迎えたという(事件後に豊田市でも「多胎パパママ教室」を開催)。

 参加者は「先輩ママからリアルな話が聞けてよかった」「出産に不安があったが、完璧にやらなくても大丈夫ということがわかり、気持ちが楽になった」と笑顔で話した。講座参加者の笑顔を見ながら、彼女にも受講の機会があれば結果は違ったのではないか、と思わずにはいられなかった。

行政による支援の現状

 被告は事件が起きる前に市や保健師からファミリーサポートの制度を紹介されたが、利用手続きのために乳児3人を連れて外出することが難しく、利用できなかったという。

 日本多胎支援協会の落合世津子理事によると、外出の難しい多胎育児の家庭からは訪問型支援が望まれており、すでに滋賀県大津市・埼玉県川越市では、所得制限なく一定の期間無料で利用できる産前産後ヘルパー制度があるという(大津市は産後のみ)。このような制度を新設しても、妊婦100人に対し多胎児の母親になるのは1人であること、国の交付金を利用することができることから自治体の財政負担感はなく、どの地域においても取り組みは可能であると指摘する。

 両市の制度の利用率は平均して多胎児家庭の2割であるが、利用者の評判は良く、制度があることで安心感につながっているという。どの地域にも多胎育児家庭の実情に合った、利用しやすく必要性の高い支援制度の拡充が強く望まれる。

この事件は三つ子育児の特殊事例なのか

 今回の事件の被告と同等、あるいはそれ以上の苦労をしながら子育てをしてきた方もおられることも考え、「この事件の論点は何か」を考えながら取材を行った。どのような状況があったとしても、決して犯罪を正当化することはできない。しかし、被告だけが刑に処せられればそれで済むほど、事件は単純ではないと感じた。

 今回お話をうかがった、三つ子育児経験者であり、長年多胎家庭の支援をしてこられた糸井川さんは、実刑判決に強い違和感があると話す。

「判決を受けて寄せられた多くのメッセージの中に『これが子どもを産んだ母親の自己責任になるのなら、こんな国では子どもは産めない』という言葉があったのですが、胸に突き刺さりました。これはこの事件だけの問題ではなく、子育て環境全体への問題提起なのだと思います」(糸井川さん)

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