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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

トヨタとJAXA、共同で月面用車両を開発…日本勢の技術結集で宇宙開発が加速か

文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部
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 月面探査においても、これまでアポロ計画で行われた、一点に着陸しての探査~地球への帰還から、月面基地を拠点とした広範な移動を含む探査が次の目標となります。それによって、人類の活動領域の拡大と月に関する科学的知見の深化が期待されますが、安全な移動手段の確保は喫緊の課題です。

 背景には、ここ数年で急速に高まってきた各国の月有人探査計画の具体性があります。残念なことに、直近のイスラエルによる月面軟着陸探査機「ベレシート」は着陸速度を減速するメインエンジンのトラブルで月面に激突してしまい、月へ着陸することそのものの困難さがまた浮き彫りになったかたちですが、それでも「月へ再び人類を」の動きは止まりません。

 JAXAでも月面有人探査のシナリオの検討や具体的なミッションの技術検討が行われており、今回の月面用車両は2029年の打ち上げを目指しています。これまでの共同検討でまとまった第一次案では、燃料の重量当たりの効率の観点から水素を燃料としたFCVが最有力とされており、それに研究が進んでいる自動運転技術が組み合わされています。

 国際社会における日本の位置づけから考えると、宇宙モビリティへの研究開発資源の配分は、丈夫で故障しにくい自動車をつくり続けてきた日本の優位性を生かせる分野として非常に有望です。トヨタのみならず産業界が日本の技術力を結集して「宇宙飛行士を必ず生きて基地に帰還させる」地球外天体での効率的なモビリティの開発に取り組む必要があります。

 重力は地球の6分の1、大きな岩石の転がる急峻で荒れた地形、過酷な宇宙放射線と急激な温度変化など、月の過酷な環境で宇宙飛行士を保護し、月探査を推進しなければなりません。難題は山積みですが、JAXA主導の枠組みの中では、すでにブリヂストンが接地体(車輪)の開発を進めており、「チームジャパン」が形成されつつあります。この流れに乗って自動車部材メーカーが販路を宇宙へ拡大するところに、新たなビジネス・サイエンス・テクノロジーのフロンティアが広がっていると思われます。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部)

【参考資料】
JAXAとトヨタ、国際宇宙探査ミッションへの挑戦に合意」(JAXA)

JAXA、トヨタ自動車株式会社と共に国際宇宙探査ミッションへ挑戦」(ブリヂストン)

PTサイエンティスツ社

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『宇宙と地球を視る人工衛星100 スプートニク1号からひまわり、ハッブル、WMAP、スターダスト、はやぶさ、みちびきまで』 地球の軌道上には、世界各国から打ち上げられた人工衛星が周回し、私たちの生活に必要なデータや、宇宙の謎の解明に務めています。本書は、いまや人類の未来に欠かせない存在となったこれら人工衛星について、歴史から各機種の役割、ミッション状況などを解説したものです。 amazon_associate_logo.jpg