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短期集中連載「平成30余年のテレビドラマ史」第7回

竹野内豊降板後に西内まりやで惨敗…フジテレビ“キャスティング先行”ドラマの功罪

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伝統演劇では“キャスティング先行”はむしろ“当然のこと”であり、そのこと自体が批判されることはまずないのだが……。(画像はGetty Imagesより)

“キャスティング先行”は悪か?

中町教授 でも、“キャスティング先行”というやり方自体は、別にダメなことではありませんよね?

吉之助 そうなんですよ。そこは非常に誤解されがちなところで。だって視聴者は、「スターを見たい!」と思ってテレビを見てくれるという部分もあるわけで、そこの部分を安易に否定することはできない。で、出演依頼が殺到する人気俳優に人気枠に出てもらうためには、やはり「企画はまだ決まってないけど、とりあえずスケジュールは押さえておく」ということも、仕方がないことであって。

中町教授 演劇というものの歴史を考えてみたってそうですよね。演劇では、まず劇団員が決まっていて芝居を書き下ろすことも多いですし、歌舞伎なら、まずは役者がいて、一方で歴史をくぐり抜けてきた、過去に何度も上映された演目がある。で、“有名なこの演目をやれるまでにこの役者が成長した”とか、“この年齢だからこの出し物ができる”ということで観賞している。ファンは、「ご贔屓のスターを見たい」と思って劇場に足を運ぶわけですから。

吉之助 ドラマも同じですよね。制作側が、人気のスターをまず捕まえて、「テレビに出したい」「こんな作品に出てほしい」と思うのは全然間違っていない。極言すれば、それがテレビマンの仕事だっていうことも可能で。

中町教授  作り手側だってそうですよね。脚本家にしても、制作のモチベーションがどこから生まれるのかというと、「この人を輝かせたい」「この人がこういう役を演じたらどうなるだろう?」という欲求だって大いにある。脚本家の坂元裕二さんインタビューで、自分が70歳、80歳になって脚本を書いている姿は想像できないけれど、「40歳になった広瀬すずのセリフを書きたいなとは思うんですよね」ということをおっしゃっていて。非常に印象に残っています。(この発言の出典は、Yahoo!ニュースの2018年9月23日配信記事『テレビドラマからこぼれているものを書きたい』における内田正樹によるインタビュー記事より)

吉之助 さすが、いいこと言うなあ〜(笑)。だから、先ほどの『突然ですが、明日結婚します』のケースでも、“キャスティング先行”がダメなのではなくて、キャスティングを決めたあとに、「ちゃんと企画を落とし込めなかったこと」にこそ問題があるのだと思います。初めに押さえていた役者さんを口説けなかったというのは、それに値するような企画をちゃんと持っていけなかった、脚本を作れなかったということ。それこそが問題であり、この場合のフジテレビ側のミスなわけです。

人気アイドルのキャスティング先行ドラマは間違っていない

――特にジャニーズアイドルや人気の若手イケメン俳優がドラマに主演すると、しばしば「またキャスティング先行かよ」などとSNSやネットメディアで叩かれがちです。では、そういったアイドル主演ドラマについてはどう思われますか?

吉之助 「“輝いているスター”をテレビで見たい」という視聴者の欲求に応える、という観点でいうと、そういった人気のアイドルを出演させるというのは、全然間違ってないのではないでしょうか。で、「そういったスターを使って、何をやるか」がすごく大事なわけです。もちろん、演技力がビミョーな方もなかにはいますよ(笑)。でも、いいじゃないですか。それを脚本や映像、演出で面白いものにすることこそ、制作側の仕事なわけで。例えば、演技がものすごくうまいけど地味で無名な人ばかりのドラマがゴールデンで放送されたとして、多くの一般視聴者がどこまで興味を持ってくれるかというと……。ぼくはそういうドラマも好きなんで、見ると思いますが(笑)。

中町教授 フジテレビのドラマが花開いていった過程で、「ボクたちのドラマシリーズ」という、1990年代前半に存在した少年少女向けのドラマシリーズも忘れられません。『その時、ハートは盗まれた』(フジテレビ系、1992年、主演・一色紗英、共演・内田有紀/木村拓哉)、『白鳥麗子でございます!』(フジテレビ系、1993年、主演・松雪泰子)などなど……アイドルが多く出演していて、経験の少ない俳優の演技をドラマティックに見せるカメラワークや演出がすばらしくて、若い俳優のみずみずしさともあいまってすごくいいドラマになっていたんですよね。

吉之助 「月曜ドラマランド」なんかもよかったですよね。『あんみつ姫』(フジテレビ系、1983・1984年、主演・小泉今日子)大好きだったなぁ。

中町教授 1980年代のアイドルドラマ枠ですよね。昔からフジには、“チャレンジ枠”もたくさんありましたよね。1990年代前半に「日曜ドラマハウス」という枠もあって。日曜のお昼に、関東ローカルで単発ドラマを放送していたり。ほかに深夜枠では、「美少女H」なんていうのもありました。そこから出てきて大成している方もいらっしゃるんじゃないかな。

吉之助 それに、アイドル主演ドラマがコケると、「たいして演技のうまくないジャニーズアイドルを主役に据えるのはやめたほうがいい」なんて、すぐネットで叩かれますけど、でも最近は、そんなに下手な人いないよね。嵐の二宮くんや大野くんはいわずもがな、亀梨くんとか山P、堂本剛くんだって、みんな若い頃から上手かった。アイドルたちの中でも、いい枠に出演できる人というのはやはり、それなりに選ばれてきていますよ。芸能プロサイドから見ると、特にアイドルドラマの仕上がりがイマイチなのは、やっぱり制作側が役者さんの魅力を引き出しきれなかったという部分が大きいと思いますけどね。
(構成=白井月子)

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