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短期集中連載「平成30余年のテレビドラマ史」第8回

『北の国から』から『おっさんずラブ』まで…現代ドラマにおける“脚本家”の役割と情報量

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『土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ」公式ブック』(文藝春秋)

ヒットするドラマの共通点は“情報量の多さ”

--一般的に言って、ドラマの脚本の作り方や演出の方法は、この30年間でどのように変化してきたのでしょうか?

中町教授 そうですね。最近のドラマは、放送時間に対する“情報量”がものすごく増えてきているので、そういった点でのアプローチは昔とは異なってきているかもしれません。1話の中に盛り込まれる情報量が昔に比べてすごく多くなったと感じています。それを手際よく処理して、登場人物を整理して、テンポよく見せて……ということができているドラマが、最近では「クオリティーが高いドラマ」というふうに評価されることが多いような気がします。

『相棒』(テレビ朝日系、2000年〜、主演・水谷豊)あたりがその先駆けかな。ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、2016年、主演・新垣結衣)、『アンナチュラル』(TBS系、2018年、主演・石原さとみ)、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系、2018年、主演・田中圭)を見ても、情報量がすごく多いなと感じています。

吉之助 確かにそうですね。あと、小説やマンガのベストセラーを基にした原作モノがものすごく増えてきたので、オリジナル脚本を書くときとはまた違った技術が必要になっていると思います。

中町教授 原作との関係でいえば、その話が持つメッセージなりテーマなりがドラマの中で際立つようにするというのが、原作のある脚本を書く際の大きなポイントだと思います。原作としてストーリーの流れの中で読むのと、ドラマに仕立てたときのシーンの積み重ねの中で視聴するのとでは、メッセージの浮かび上がり方は全然違う。セリフをどのタイミングで登場人物に言わせるか、そこまでの時間をどう組み立てていくか、原作からの再構築が必要なんです。だからこそ、原作に書かれていない部分を足す必要もある。

 また、小説の場合は主人公の目線や心情で話が動いていくことが多いのですが、テレビドラマはそうはいかない。かつての昔のテレビドラマはそういったものもあったのですが、最近のドラマでうまくいっているドラマというのは、一人の目線だけでは話が動いてないんですよ。複数の人間を配置して、それぞれの人物を描くというのがとても大事な作業になってきてるんじゃないかな。

 だからこそ脚本を書く上での一番大きな作業は、ストーリーを作るというよりは、「舞台設定」と「人物」を作るというところなのではないかと思います。

吉之助 ストーリーがガチガチに固まっているより、そのほうが面白いドラマができる場合もありますよね。よくマンガ家の方が「キャラクターが勝手に動き出す」みたいなことを言いますが、脚本家の北川悦吏子さんも『半分、青い。』(NHK総合、2018年、主演・永野芽郁)のときに同じようなことをツイッターで呟いていました。まあ、中にはプロデューサーが「最後はこういう結末だから、ちゃんとそうなるようにして」といってカッチリ作るタイプのドラマもあるので、人それぞれだとは思いますが。

時代と共に変わる“演出”の作法

吉之助 あと当然ですが、「演出」の力も重要ですよね。“人物を描く”ときにも、脚本に書かれていなくても、たとえば目線ひとつで登場人物の心情がわかったり、ちょっとした仕草でその人物の人となりがわかったり。

中町教授 うんうん。構図とかカット割りのたくみな演出家はいて、『アンナチュラル』や『重版出来!』(TBS系、2016年、主演・黒木華)を手がけた塚原あゆ子さんなんて、まさにそうですよね。

吉之助 『Nのために』(TBS系、2014年、主演・榮倉奈々)も塚原さんでしたよね。塚原さんはここ数年で、グッと出てきた印象があります。

中町教授 複数の人物をどう配置し、人間関係をどう描くのかというのが、今のドラマにおいてすごく求められていること。で、脚本だけでなく、演出の仕方もここ最近で結構変わってきているように思います。ひとつのシーンにわりと大人数がいたり、カットを重ねて次々と多くの人物が出てきたりというシーンで、その情報処理をして、「そのシーンで何を見せるのか」「ひとつの場での人間関係をどう映像の構図として切り取るか」などがすごく重要。

 脚本家も演出家も、とにかく今は情報量を多く盛り込む、それからキャラクターをしっかりと書き分けて伝えるというところが求められているなという印象があります。最近の脚本家でいうと、野木亜紀子さんや森下佳子さん(『JIN-仁-』『義母と娘のブルース』など)、安達奈緒子さんの脚本作品は、そのあたり見ごたえがありますよね。
(構成=白井月子)

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