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安川電機の業績悪化と日本経済低迷の予兆…中国、生産内製化で“日本企業不要化”か

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 4月から中国政府は、増値税(消費税に相当)を引き下げた。中国国内の製造業では、税率が16%から13%に引き下げられる。補助金支給の効果も加わり、徐々に中国の自動車販売の減少ペースは縮小していくだろう。それは、中国の生産設備の操業度の回復にとって欠かせない。そうした期待が、安川電機の株価を支えている。

 このように安川電機の株価は、自社を取り巻く外部環境の好転によって持ち直している部分が多い。

不確実性高まる環境に対応するには、“イノベーション”が不可欠

 今後、安川電機は、自社の資源を最大限に活用して新しい取り組みを進めればよい。同社には、スピード感をもって新しいテクノロジーの実用化、製品の開発を行うことが求められる。そう考える理由は、事業環境の不確実性が高まる可能性があるからだ。

 中国経済はインフラ投資と減税などに支えられて、一時的に持ち直すだろう。ただ、その場合に日本企業が中国需要を取り込み、2017年から2018年初旬のような好況を謳歌できるとはいいづらい。なぜなら、中国は工作機械などの内製化を目指しているからだ。

 IT企業などの成長を見ていると、中国経済には大きなダイナミズムがある。すでに、フィンテックに関する分野では、米国のIT先端企業に匹敵する、あるいはそれを上回る勢いで、中国企業が影響力を高めている。日本企業が競争力を発揮してきた工作機械やFA(工場の自動化)に関する分野でも、中国企業が急速に技術力を高め、安川電機などのシェアを奪う可能性は軽視できない。

 加えて、長い目で見ると、中国経済の先行き不透明感は高まるだろう。中国は経済成長の限界に直面している恐れがある。中国の不良債権問題は深刻化している。これは、投資依存型の経済運営の限界だ。債務問題を短期間で解決することは、口で言うほど容易なことではない。

 安川電機には、中国が重視するEV(電気自動車)の開発・生産などの分野で、新しい取り組みを期待したい。言い換えれば、従来にはない機能を持った製品を生み出し、完成品メーカーの創意工夫を刺激できるか否かが、同社の持続的成長を左右するだろう。

 中国経済の長期的な見通しは不透明だ。一方、米国経済の成長率は徐々に低下するものの、相応の安定感は維持できるだろう。それが、当面の世界経済の安定を支えるとみる。景気が落ち着いている間に、経営者は持続性あるビジネスモデルを確立しなければならない。

 経営者には、自社の強みを的確にとらえ、それをもとに従来にはなかった発想や取り組みを進めることが求められる。そうした経営者の存在が、日本企業の潜在成長率にも無視できない影響を与えるだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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