ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
また、入場制限やインターネット投票などのアクセス制限だが、こちらもすでに以下のように、いくつかの施策が実行されている。
【インターネット投票の利用制限】
ギャンブル等依存症である者等またはその家族が申告した場合にインターネット投票の利用を制限
・競馬
中央競馬―17年10月本人申告、17年12月家族申告による利用制限を実施
地方競馬―17年10月本人申告、18年4月家族申告による利用制限を実施
・競輪・オートレース
17年11月から本人申告、2018年4月から家族申告による利用制限を実施
・競艇
17年10月から本人申告、2018年4月から家族申告による利用制限を実施
【入場制限】
ギャンブル等依存症である者等またはその家族が申告した場合に入場を制限
・競馬
中央競馬―17年7月本人申告、2018年10月家族申告による入場制限を実施
地方競馬―17年4月本人申告、2018年11月家族申告による入場制限を実施
・競輪・オートレース
17年10月から本人申告、18年10月から家族申告による入場制限を実施
・競艇
17年7月から本人申告、2018年10月から家族申告による入場制限を実施
しかし、その効果はあまり芳しいものとはいえないのが実態だ。実施件数は以下のようになっている。
【インターネット投票の利用制限(2018年12月末時点)】
・競馬―本人申告789件、家族申告31件
・競輪・オートレース―本人申告76件、家族申告3件
・競艇―本人申告129件、家族申告5件
【入場制限(2018年12月末時点)】
・競馬―本人申告12件、家族申告0件
・競輪・オートレース―本人申告0件、家族申告0件
・競艇―本人申告6件、家族申告0件
ギャンブル業界は“受難の時代”へ
こうした状況を見ると、インターネット投票の利用制限については、ある程度の効果は出ているようだが、入場制限については、その効果がほとんど見られないのが実態だ。そこで政府は、個人認証システム等を利用した入場制限システムを研究し、導入の可能性を検討することを打ち出している。
しかし、例えば競馬で入場制限を受けたギャンブル等依存対象者が、競輪やオートレース、競艇に自由に入場できるのでは、ギャンブル依存の対策にはならない。公営ギャンブルを一貫して入場制限ができるような個人認証システムの導入が不可欠になる。この場合、巨額の研究費用とそのシステムの導入という設備投資が、各公営ギャンブルにはのし掛かることになる。その上、実際にどの程度の効果があるのかは未知数だ。
さて、パチンコの場合には、15年10月からパチンコ店の顧客会員システムを活用し、客が1日の遊技使用上限金額等を自ら申告し、設定値に達した場合、パチンコ店の従業員が当人に警告する「自己申告プログラム」の普及に取り組んでいる。同プログラムの導入店舗数は、18年12月末時点で2195店舗まで拡大している。また、17年12月からは利用者の同意を得た家族からの申告により、パチンコ店への入店を制限する「家族申告プログラム」も実施している。
パチンコも同様に個人認証による入場制限のシステム導入を求められているが、すべてのパチンコ店が共通した個人認証データを持たなければ、ギャンブル依存の対策にはならないだろう。あるいは、パチンコと公営ギャンブルが共通した個人認証データを持つ必要があるかもしれない。この場合、公営ギャンブルと同様に、パチンコ業界は巨額の研究費用とそのシステムの導入という設備投資に耐えられるのだろうか。
その上、パチンコでは、2021年春までに出玉規制にかかわる新基準に適合する遊技機に入れ替えることも義務付けられている。
国内でのカジノ解禁に向け、既存の公営ギャンブル、パチンコ店は「ギャンブル依存症等の対策」という名目のもと、“受難の時代”を迎えている。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)