ただそのアメリカでどうなっているかというと、シンクレア・ブロードキャスト・グループという巨大メディア企業がトランプ大統領と近い関係になって、トランプに都合のいいニュースを流したりしているわけです。そういうこともあって、やはり政治的公平を謳った放送法4条を守ろうという方向に、学者なんかも変わってきているというところはあります。中立というよりは、NHKは公共性をちゃんと果たしているのか、という整理の仕方が大事だと思います」

NHKトータルで考える公共性

 NHK制作局による組織改編によって、「文化・福祉番組部」が解体されるのではないかということも今、伝わってきている。

「文化・福祉班というのは、NHKのなかでは『ETV特集』というドキュメンタリーや、障害を持った人たちやホームレスなど生きることに困難のある人々にフォーカスをあてた『ハートネットTV』などの番組を制作してきた人たちです。NHKには報道番組班というのがあって、報番と呼ばれています。それに対して『ETV特集』をつくるのは番組制作班で、番制と呼ばれます。番制は反体制みたいな傾向が強くて、原発事故の検証なんかをすごく熱心にやってきました。

 2011年5月には『ETV特集』で『ネットワークでつくる放射能汚染地図』が放送されました。3.11の福島第一原発事故から2カ月、放射線衛生学者の木村真三さんとともに、どれだけの放射能汚染があったのかを測定するとともに、避難した被災者の様子や行政の実態も明らかにしたものです。その頃、NHKを含めてテレビ局や新聞社などのマスメディアは政府の勧告に従って、原発から30キロ圏内には入っちゃいけないと記者たちに規制をかけていたわけです。日頃は政権批判をしているテレビ朝日やTBSも従順にそれに従いました。30キロ圏内で取材したフリーランスのジャーナリストらもいますけど、マスメディアではETV特集班だけが入った。この番組は、ギャラクシー賞、文化庁芸術祭賞大賞を受賞し、海外からもシカゴ国際映画祭ヒューゴ・テレビ賞などが授けられました。

 そうして評価されたときに、NHKのETV特集班がいたから、マスメディアはかろうじて面目を保ったね、って言った人が何人もいたわけです。それを見たときに、NHKのニュースは偏っていたとしても、トータルで考えたら公共性を果たしているんじゃないかと考えられるわけです。報番と番制の垣根を取っ払って、皆、報番みたいにしちゃおうっていうのが文化・福祉番組部解体論という話なんです。侍みたいな人たちが文化・福祉番組部に集まっているということはあって、それが解体されるのはどうなんだっていうことで、そこのディレクターやプロデューサーは皆反対しています。まだ起きていないことなので断定はできないですが、懸念される事態であることは間違いありません」

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