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『インハンド』現役女医も度肝抜かれる“医療あるあるネタ”の宝庫!解熱剤の恐ろしい話

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『インハンド』公式サイトより

 連続テレビドラマ『インハンド』(TBS系)は、3話、4話と、なかなかいい展開を見せています。紐倉哲博士(山下智久)が幻肢痛で苦しむなど、弱い部分が見え隠れし始めた3、4話。助手の高家春馬(濱田岳)のコミカルな演技も面白くなってきました。

 そして、“ランブルちゃん”(ランブル鞭毛虫)が紐倉博士の携帯の待ち受け画面と知り、妙な親近感が湧きました。ちなみに、私の待ち受けは足関節外側靭帯の超音波画像で、先日見た後輩の待ち受けは脊椎でした。これは“専門職あるある”でしょうか。

 さて、3話、4話を見て、作者の医学知識とそのストーリー性に感心してしまいました。細胞の老化やがん化に関係しているテロメア、プリオンやウィルスとNSAID(非ステロイド系鎮痛薬)との関係など、医療の世界では日常のため、気にも留めないようなことをうまくドラマ化しています。「ほっほ~」「なる~」と、うなりながら見入ってしまった回でした。

 テロメアは一時期、民間雑誌などでも取り上げられ、ちょっとしたブームになりました。簡単に言ってしまうと、テロメアは細胞分裂の終わりを決定するものです。いわば、細胞の寿命を決める、という感じでしょうか。DNA鎖の先端についているテロメア自体の長さがある程度短くなると、細胞は分裂をやめ、老化細胞になるのです。老化細胞は抗酸化酵素などを出すこともできないため、増えると身体が酸化してしまうようになるのです。

 テロメア合成酵素であるテロメアーゼの活性が高いと、細胞が無限に細胞分裂してしまう「がん化」という状態になっていくこともわかってきました。実際に、テロメア研究では寿命を延ばすことができないかといった研究や、テロメア活性を抑制することによるがん治療などの研究が行われています。

 第3話では、このテロメアが美容業界の怪しい治療として登場しました。ところが、結局、まったくテロメアは関係なく、GDF-11という老化抑制にかかわるたんぱくの一種を輸血で摂取する、というものでした。そして、生物製剤でプリオンに感染して認知機能障害を発症するという悲しい結末。これでもかというくらい、医者なら知っていて当然ですが、一般的にはレアな医学知識が組み込まれていました。

 プリオンはクロイツフェルト・ヤコブ病、すなわち狂牛病で一時期騒がれたたんぱく質で、加熱しても死滅しないことで有名です。医学生時代にプリオンの存在を知って以来、私はどうしても羊の脳は食べられないし、美容のために生物製剤を身体に注入することもできません。そういえば人が勝てないウィルスがあるよね、と再確認させられます。

インフルエンザでは使用NGな解熱鎮痛剤

 そして、治験と解熱鎮痛剤の話題。最近ではOTC(市販薬)で解熱鎮痛剤も簡単に購入可能ですから、持っていないと怖い知識です。解熱鎮痛薬にもいろいろな種類があって、インフルエンザに罹った方に医者が処方する解熱剤は、アセトアミノフェンです。テレビCMなどでもおなじみのロキソニンやボルタレンは、非ステロイド系鎮痛薬(NSAID)で、インフルエンザ感染時には使ってはいけません。これは研修医が一番初めに学ぶことと言ってしまうと大袈裟ですが、それくらい当たり前で、医師としては知っていなければいけない知識でもあります。

 さらに、脳には血液脳関門BBB(Blood Brain Barrier)という膜のようなものがあって、ある程度の大きさを超えると、そこに引っかかって脳には到達できないようになっていますが、一部のウィルス感染ではBBBが破綻し、非ステロイド系鎮痛薬が脳に移行することにより脳症を重症化させる可能性がある、という研究まで出ています。

 ウィルス性脳症は、重症化すると後遺症が残る可能性が高くなるため、とにかく慎重に薬は選ばないといけないのです。毎年、冬になるとインフルエンザ感染と異常行動が話題に上がっている身近な話題を、「自殺させるウィルスがいるか」という題材にまで膨らませてつくられた第4話は、目の付け所がすごいなと感じました。

 私にとっては毎回、基礎医学知識の復習のようになっている『インハンド』。医療系ドラマの楽しみにしている「そうきたか~」とうなりながら見られるのも、全10話だとすると、あと6話でしょうか。

 紐倉博士の過去とともに、かっこいい山Pが見られるのも楽しみですが、どんな感染症、あるいは寄生虫が出てくるのかが、毎回とっても楽しみです。ちなみに、紐倉博士を苦しめる幻肢痛の治療には鏡がいいのに……、と思いながら見ております。
(文=井上留美子/医師)

井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、HEALTHPRESS、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

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