ソニー・ミュージックレーベルズによって3月13日に出された、「ピエール瀧の逮捕に伴うソニー・ミュージックレーベルズの対応について」とのアナウンス

「推定無罪」は適用され得るか

――ソニー・ミュージックレーベルズは、CD・映像作品の販売・配信の自粛を即座に決めました。

河西弁護士 電気グルーヴ関連の過去作については流通がほとんど終わっているわけで、これから新たにCDなどを買う人はそう多くはない、販売・配信自粛は、サイト上から商品を消す手続きをすればそれで済む、だから、大きなダメージにはならないと考えられる。こうした背景も、ソニー・ミュージックレーベルズが作品の販売・配信を自粛した理由のひとつにあるのかもしれません。

――映画では、東映が予定通り上映することを発表しました。この判断をどう評価されますか?

河西弁護士 映画は観たい人が観ればよいのであって、観たくない人は観なくても済みます。一律に上映を自粛すると、観たい人が観られなくなってしまい、観たい人の利益を奪ってよいのかという問題が生じます。制作コストも、映画の場合きわめて多額の予算がかかっているケースも多く、ひとつの作品が上映できなくなるだけで数億円の損害が発生し得る。こうした点を踏まえて、映画の場合は予定通り上映し、観たくなければ観ないという消費者の判断に任せよう、という考え方につながるわけです。さらにゲームに関しても、基本的にはプレイしたい人がプレイするものなので、販売自粛はせず、消費者の判断に任せるという考え方もあり得るでしょう。

――しかし実際には、瀧被告の出演するPS4用のゲーム『JUDGE EYES:死神の遺言』については、販売元のセガゲームスは当面の間出荷を自粛することなどを発表しましたね。さて、そうした自粛に反対する意見として「作品に罪はない」という主張があります。気持ちはわかりますが、少々情緒的な印象も受けてしまいますが……。

河西弁護士 確かに作品に罪はありませんが、それを主張したら、すべての作品について自粛する必要がない、という結論にもなりかねませんよね。作品に罪はない。それはそうだ。しかし、上映や放送してよいかどうかは別の問題です。作品自体に罪がないからどんな作品も上映・放送してよしというのは、やはり現実社会では無理があると思いますね。

――一方で、たとえ逮捕されても、検察に起訴され裁判所で判決が出るまでは、「推定無罪」の原則を適用される。だから、逮捕された時点でさも犯罪者であることが確定したかのように扱い、それに基づいて各所での判断をすることは適当ではない……という見方もありますね。

河西弁護士 これは私の見解ですが、「推定無罪の原則」はあくまでも刑事司法上の概念、すなわち刑罰を科すときの基準なので、それをもって「ドラマや映画やCMの自粛もすべきではない」とするのは、適当ではないように思います。今回のピエール瀧さんのケースでいえば、現に逮捕された事実があり、容疑者も認めており、それなりに根拠のある事実があります。であれば、その事実をもって自粛をする際の判断材料のひとつとするのは、妥当なことだと思われますね。

――CMについてはクライアント企業が各社の基準で判断すればよいでしょう。しかし、映画やテレビ番組では、業界内に統一的なガイドラインが定められていないことも問題ではないでしょうか。ガイドラインがないからこそ、自粛すべきかどうかで毎回喧喧囂囂の議論が生じてしまうという一面もあるように思われます。

河西弁護士 そうですね、確かにBPO(放送倫理・番組向上機構)も、こうしたケースにおける「自粛」の判断のガイドラインをなんら定めてはいません。BPOなどの業界団体が議論を重ねてそうしたガイドラインを定めるというのも、混乱を回避するひとつの手かもしれませんね。
(構成=編集部)

次回は、同じく河西邦剛弁護士に、NGT48問題についての見解を聞いていく】

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