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“若者の街・渋谷”の終焉…渋谷、巨大なオフィス街化の裏に東急の緻密な戦略

文=小川裕夫/フリーランスライター
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 東急の沿線民は、愛国心ならぬ愛線心が強いといわれる。東急平野の人口は、おおよそ540万。それだけ多くの沿線人口を顧客として抱える東急が、渋谷を再開発して街をつくり替えても、東急平野の住民がそっぽを向くとは思えない。また、沿線民が新宿や池袋に足を向けるような事態が起きることも考えづらい。相互直通運転による通過駅化で凋落するという事態は、杞憂に終わりそうだ。

 東急は自由が丘や二子玉川といったハイクラスな街を沿線に抱える。それだけに、渋谷を高級化するノウハウを持ち合わせている。若者の街からオフィス街もしくは大人の街にシフトさせることは東急にとって難しい話ではない。

 こうした渋谷のオフィス街への方向転換を受け、これまで若者をターゲットにしてきた店の撤退と淘汰が始まっている。そして、銀座や日本橋といった老舗まではいかないまでも、準高級路線の店の進出も動き出している。渋谷区の職員は言う。

「これまでの渋谷は若者の街というイメージで売り出してきましたが、人口減少社会に突入している今、若者だけをターゲットにしている時代ではなくなりました。オフィスワーカー、家族連れといった多種多様な人たちを取り込まなければ生き残れません。渋谷駅は東急田園都市線や東横線の根本ですから、特に沿線に住む人たち、働く人たちをがっちりと囲い込むことが重要になってくるでしょう」

 若者の街を脱して、渋谷が向かおうとしている先はオフィス街化だ。これまでにも渋谷を拠点にする企業は少なくなかったが、ここ10年で五反田や大崎といった渋谷から至近の駅にITベンチャーが勃興してきた。特に五反田は、日本のシリコンバレーとも称されるほどIT企業が集積する。そうしたITベンチャーと取引関係がある企業が渋谷にオフィスを構えるようになっている。そうしたIT企業に勤めるオフィスワーカーは、退勤後に渋谷で夜を楽しむことが多いだろう。それが、渋谷のオフィス街化や大人の街化を後押しする。

 渋谷の後背地とされてきた恵比寿・中目黒・代官山にもその波は波及している。代官山には、2015年にクラフトビールを楽しむ「スプリングバレーブルワリー東京」がオープン。同店は、クラフトビールの聖地となるようキリンビールが満を持して出店した。

 代官山というオフィスワーカーと無縁なオシャレな街で、ビールを楽しむ。これまでにはなかったトレンドが、渋谷を動かしつつある。

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