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木村貴「陰謀論のリアル」

他国政府転覆など介入を繰り返す米国に、大統領選介入のロシアを批判する資格などない

文=木村貴/経済ジャーナリスト
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【イラン】

 第二次大戦後、イランの石油利権は英国の国策会社であるアングロ・イラニアン石油が事実上独占していた。これに反発する世論を背景に1951年、民族主義者のモサデク首相は石油国有化を断行。しかし1953年、パーレビ国王によるクーデターで失脚する。

 クーデターを背後で画策したのは米英の情報機関だった。米中央情報局(CIA)は群衆を金で雇い、国王支持のデモに投入した。イランの国会議員など有力者に対し、モサデク首相を支持しないよう協力を求め、大掛かりな買収工作を行ったともいわれる。

【グアテマラ】

 グアテマラのハコボ・アルベンス大佐は1950年、左派と軍部の支持で大統領に当選し、農地改革などの社会改革に着手した。いわゆるグアテマラ革命である。1953年、グアテマラ最大の地主である米国企業ユナイテッド・フルーツ社の所有地を没収したことで、米国と対立が深まる。

 同社は当時のジョン・フォスター・ダレス米国務長官が重役を務めていたのをはじめ、その弟のアレン・ダレスCIA長官、さまざまな国務省職員、議員、米国の国連大使などと近しい関係にあった。1954年、CIAが支援した反革命軍が侵攻し、アルベンス政権は崩壊する。

【チリ】

 1970年、南米チリの大統領選でサルバドール・アジェンデが勝利し、世界で初めて自由選挙で合法的に選出された社会主義政権が誕生した。これに対しニクソン米政権の下、CIAは反政府工作を進める。

 1973年、CIAに支援されたアウグスト・ピノチェト将軍のクーデターでアジェンデ大統領は失脚し、自殺する。その後、独裁体制を敷いたピノチェトは虐殺、拷問、誘拐などで人権を抑圧し、国際的な批判を浴びることになる。

【パナマ】

 中米のパナマでは1983年以降、マヌエル・ノリエガ将軍が独裁者として君臨していた。ノリエガは若い頃からCIAに通じ、中南米の左派政権などの情報と引き換えに資金を得ていた。米国が支援した中米ニカラグアの反革命ゲリラ、コントラへの資金と武器の提供を仲介し、パナマで米国がコントラを訓練する許可を与えてもいた。一方でノリエガは麻薬貿易に関与していたが、米国はこれを黙認していた。

 しかしニカラグア内戦が1989年8月に終結すると、米国はノリエガに利用価値はなくなったとみて切り捨てることにする。同年12月、かつてCIA長官を務めたブッシュ(父)米大統領の命令で米軍はパナマに侵攻。米政府の公式見解では500名ほどのパナマ人が命を落としたが、実際には数千人に達したとの情報もある。

 以上の例だけでも、米国政府が情報機関を使って秘密裏に画策し、ときには軍の力で流血を引き起こしてまで断行した介入の実態がよくわかるだろう。ソーシャルメディアでフェイクニュースを拡散させたというロシア疑惑など、かわいく見えるほどだ。

木村 貴/経済ジャーナリスト

木村 貴/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。1964年熊本生まれ、一橋大学法学部卒業。大手新聞社で証券・金融・国際経済の記者として活躍。欧州で支局長を経験。勤務のかたわら、欧米の自由主義的な経済学を学ぶ。現在は記者職を離れ、経済を中心テーマに個人で著作活動を行う。

Twitter:@libertypressjp

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