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なぜ小保方晴子氏は「STAP細胞を見た」と思い込んだ?間違った発表をする科学者たち

構成=大野和基/ジャーナリスト
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科学研究分野における構造的問題点

― がんについて話しましょう。がんについての記事はたくさん出ています。どうしても希望的観測の響きの記事が多いと思います。がんそのものを治す万能薬はありませんが、記事だけを読むと、まるで近い将来に克服できるような錯覚をしてしまうような内容も多くあります。このような記事の問題はどこにあるでしょうか。

ハリス 大学のような研究機関は「がん治療の最新の進歩。今度こそは見つかりました」というリリースをたくさん出します。本書は臨床前の研究についてですが、多くの大学は人間で試す前に結果を発表します。マウスの実験で、がんが完治したと発表します。そして「我々のチームは、これはがん研究におけるブレークスルーであると思います」と言います。

 我々ジャーナリストが気をつけないといけないのは、それをそのまま受け取って記事を書いてはいけないということです。そのまま書いてしまえば、誇張した内容になってしまいます。私はできるだけ慎重に報道しますが、同僚の多くは誇張して報道しています。

― 発表された発見が時の試練に耐えるかどうか、どうやってわかるのでしょうか。

ハリス 事前にわかることはありません。実際、90%は時の試練に耐えられません。人間に試した段階で、ほとんどが無効になってしまいます。

― ノーベル賞受賞者でさえも罠にはまってしまうこともありますね。

ハリス もちろんです。本書で紹介したキャロル・グライダー氏は2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞した分子生物学者です。彼女は非常に興味深いアイデアをジャーナルに発表しましたが、のちに間違っていることがわかりました。彼女はできるだけ早く研究を発表しないといけないというプレッシャーを感じていました。まだ若い科学者だったからです。彼女が属していた機関に「キャリアを築くために、発表しなければならない」と言われていました。

 彼女は自分が発表した内容が正しいことを祈っていましたが、結果として間違っていました。でもそれは彼女の不正ではなく、まだ準備ができていなかっただけです。プレッシャーを感じて発表した後、別のラボがさらに深く調査したら、彼女の出した結論が間違っていることがわかりました。それも発表されました。すると彼女は「しくじったのは私です。でも前を見て進みます」と言いました。

 これは良い科学者であることの印です。つまり、自分のアイデアに頑固にしがみつかないことです。エキサイティングな結果が出ればそれを発表し、間違っていることがわかればあっさりその間違いを認めて前進することが重要です。

 しかし、間違いを認めることが研究助成金を失うことにつながるかもしれないとき、それは間違ったインセンティブになります。自分が間違っていると頭のどこかでわかっていても、なかなか認めないことはよくあることです。我々はみんな人間です。残念なことに、人間の行動が科学の世界でも展開しているのです。

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