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成馬零一「ドラマ探訪記」

『東京独身男子』好感続出の秘密は“80年代トレンディドラマ”の再現

文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家
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今のテレ朝だからこそ生まれた『東京独身男子』

 こういうドラマをぬけぬけとつくれるのは、今のテレビ朝日の強みだろう。テレ朝のドラマというと、『相棒』シリーズを筆頭とする刑事ドラマと『ドクターX』シリーズのような医療ドラマがほとんどで、保守的というイメージが強い。しかし、近年では倉本聰脚本の老人ホームを舞台にした昼の帯ドラマ『やすらぎの刻~道』や、男性同士の恋愛を扱った深夜ドラマ『おっさんずラブ』など、意外なヒット作を生み出している。

 これは、『相棒』などのドラマが盤石だからこそできる冒険だろう。安定したシリーズモノと斬新な作品を打ち出す攻守の絶妙さがテレ朝にはあり、この『東京独身男子』も、そういったテレ朝の社風から生まれたドラマだといえる。

 実は、『おっさんずラブ』もトレンディドラマの方法論でつくられた作品だった。男性同士の恋愛というモチーフに目が行きがちだが、ドラマの見せ方は、誰と誰がくっつくのかというドキドキを片思いの連鎖で引っ張るというものだった。

 これこそ80年代のトレンディドラマが得意とした展開だが、もしかしたら、今の作り手のなかにトレンディドラマを再評価しようという機運が生まれているのかもしれない。

 近年のテレビドラマは80年代に比べると映像作品として洗練されたが、それと引き換えに敷居の高い作品が増えていて、ライトユーザーが入りにくくなっている。作家性の強い作品が多いのは文化として円熟した証明だが、トレンディドラマの時代にあった、万人が気軽に楽しめる敷居の低さはあらためて再評価すべきではないか?

『東京独身男子』を見ていると、そんなことを考えてしまうのだ。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

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