現在の小嶋氏を紹介する映像にかぶせたナレーションは、

「小嶋さん、かつては年商100億円を超えていました」
「そこ(ヒューザーの販売用パンフレット)に書いてあったのは、デフレの時代に客をつかんだヒューザーの売り文句。100平方メートルを超える広い間取り。そんなマンションを都心部でなんと3000万円台という格安で販売していました」

 と語る。池上氏は、

「デフレをうまく見つけたビジネスですよね。ビジネスモデルとしては非常にうまいやり方だなと思うんですね」

と解説し、「耐震偽装マンション事件」とデフレを唐突に結びつけようとする。

 しかし、当時のヒューザーの主力マンションの価格帯は5000万円台のものだった。にもかかわらず、一番安かった3000万円台の部屋だけを紹介するのは、視聴者に、「だから耐震偽装したのだろう」という疑念を抱かせる以上の意味はない。
 
 収録には、「特命記者」タレントの小島瑠璃子氏も、事前の説明は何もないまま、池上氏に同行してきた。小島氏は開口一番、

「耐震偽装しなくてもよかったんですか?」

と小嶋氏に質問。その場に居合わせた筆者は、思わず彼女を叱り飛ばしそうになる。なぜ、不勉強なタレントをわざわざ連れてくるのか。非礼にも程があろう。当の小嶋氏も、

「ひどいね、それ。耐震偽装は私がやったんじゃないんですよ」

と、苦笑しながら切り返していた。さらに驚かされたのは、その直後のことだ。池上氏が小嶋氏に対し、

「あとになってみれば、あれだけ安かったのは耐震偽装で設計に問題があったから、安くしてたんだなというふうに受け止めたんですけど」

と問いかけたのである。呆れたことに、不勉強なのは「ジャーナリスト」の池上氏も同じだった。

「それはまったく違いまして――」

と、小嶋氏は答える。耐震偽装によって「減らされた」とされた鉄筋のパーセンテージは、販売価格に対して1%あるかないかであり、5000万円のマンションであれば50万円程度なのだと小嶋氏が説明すると、池上氏は「ほう」と相槌を打つ。

池上「耐震偽装があったというのは、ご存じなかったということですか?」
小嶋「寝耳に水でしたよね」

 池上氏は、事件のその後について、何も知らないのであった。なぜ池上氏は、「耐震偽装マンション事件」の当事者取材を思い立ったのだろう。せめて、事前に渡してあった小嶋氏の著書くらいは目を通しておくべきだった。

 同業のジャーナリストとして思う。こんな場当たり的かつ非礼な取材をしていて、怖くないのだろうか。小嶋氏が必死で怒りをこらえ、笑みを浮かべながら応対しているのが、気の毒でならなかった。
 
 番組は、こうした「現地取材」のVTRに続き、「事件が起きた際の謝罪の仕方は難しい」として、同事件後に「謝罪コンサルタント」なる商売が生まれたことへと話をつなぐ。池上氏は、「デフレのあだ花」と「謝罪に失敗したケースのひとつ」として「耐震偽装マンション事件」を片づけていた。もちろん、同事件はそんな話ではない。

        ※

『池上彰の改元ライブ』を観た小嶋氏はその翌日、「何を言っているんだか、全然わからない番組でしたね」と、感想を述べていた。そして、「テレビ東京の取材には金輪際応じられない」と言う。異存はなかった。応じるべきではない。番組の事前打ち合わせから立ち会っていた筆者の率直な感想は、「騙された」である。

 池上氏とタレントの小島瑠璃子氏を“インタビュアー”として見た場合、その差をまったく感じられなかったことが、何より悲しかった。「我が国を代表するジャーナリスト」だとされる池上氏からの反論をお待ちしている。
(文=明石昇二郎/ルポライター)

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