ビジネスジャーナル > ライフニュース > 環境ホルモン、聞かれなくなった理由  > 2ページ目
NEW
西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

有機スズ化合物に関して「環境ホルモン」という言葉を聞かなくなった理由

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授

有機亜鉛化合物

 
 グルコン酸亜鉛は、グルコン酸銅と同じく食品衛生法により母乳代替食品と保健機能食品以外の食品に使用してはならないことになっています(注1)。食品添加物として許可された理由は亜鉛強化のためで、不足すると成長が遅れる、皮膚炎や下痢などの症状が表れやすいなどです。

 添加量としては「母乳代替食品を標準調乳濃度に調乳したとき、その1Lにつき、亜鉛として6.0mgを超える量を含有しないように使用しなければならない」となっています。グルコン酸亜鉛は保健機能食品に使用したとき、「当該食品の一日当たりの摂取目安量に含まれる亜鉛の量が15mgを超えないようにしなければならない」となっています。

 米国では、グルコン酸亜鉛はGRAS 物質として取り扱われ、栄養強化剤としてサプリメント類、あめ類、飲料等に用いられており、使用量の制限は設定されていません。また、EUではグルコン酸亜鉛等の栄養強化剤は、食品添加物ではなく、食品成分扱いとなっており、調製乳についてのみ使用量の制限があります。普通の食事をしていれば、不足することはありませんが、カキをはじめ魚介類や種実類に多く含まれています。

有機スズ化合物

 有機スズ化合物は多くの種類があります。過去に話題となったのが、内分泌かく乱化学物質(いわゆる「環境ホルモン」)作用があるのではないかということで一時期、環境ホルモンとしてテレビや新聞で連日騒がれました。

 酸化トリブチルスズ(TBTO)、トリブチルスズ(TBT)トリフェニルスズ(TPT)などの有機スズ化合物が船底塗料や魚網防汚剤などに使用されていました。その理由は、船の底の部分に海藻や貝等が付くと船の速度に大きな影響を与えるだけでなく、ガソリンの消費量も大幅に増えてしまうからです。また、魚網に海藻や貝が付着するといけすの魚が酸欠を起こして死んでしまうなど、いろいろの障害が出てしまいます。

 しかし、イボニシなどの巻貝にはメスがオス化する現象に影響を与えることがわかってきました。そこで1980年当初から世界的に船舶の船底などに有機スズ化合物を使用しないという取り決めがなされました。

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

有機スズ化合物に関して「環境ホルモン」という言葉を聞かなくなった理由のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!