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米山秀隆「不動産の真実」

住宅、「定額制」広がりで“所有”から“利用”への流れ加速

文=米山秀隆/シンクダイン研究主幹

 これに対し不動産では、施設として供給するためには、一定の条件を満たすために改修する必要があり、消費者の持て余しているものを単に需要者にマッチングすればよいというわけではないという点が、ビジネスとして成り立つためのハードルを高くしている。ただ、個人では、自分の住んでいる家を住んだまま、留守の時に集会スペースなどとして時間貸しすることで、一定の収入を得ている例もあり、これは定額制のビジネスモデルではないものの、不動産をマッチングにより、そのまま活用できる場合もあることを示している。

 不動産分野での定額制の2つ目は、ゲストハウスやホステルの定額制である。これは、前述の定額制の第3のタイプに近い。多くの施設に定額制で泊まれる仕組みをつくれば、稼働率向上につなげられる可能性がある。ゲストハウスやホステルですでに採算の取れる水準で稼働しているが、なお稼働率を上げたい場合に、定額制の顧客を確保することは有効になると思われる。

 これとは別であるが、最近は都心近くのゲストハウスで定額制を導入し、残業で終電を逃した時、あるいは繁忙期に通勤時間を節約して会社近くに宿泊したい時などの需要を確保しようとしている例もある。立地によっては、ひとつのゲストハウスだけで定額制を導入できる余地がある。

 一般の財、サービスに比べ、不動産分野での定額制の導入はより難しいと考えられるが、最近はさまざまなチャレンジが登場しており、今後の発展が期待される。近年の不動産の所有から利用への流れは、定額制というかたちでも進展しつつあるといえる。
(文=米山秀隆/シンクダイン研究主幹)

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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