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『いだてん』大河らしい良回!視聴者に考えさせる問題提起&名言連発

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『いだてん~東京オリムピック噺~』公式サイトより

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第20話が26日に放送され、平均視聴率は前回から0.1ポイント減の8.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 今回は、第一次世界大戦の影響で中止となった1916年のベルリンオリンピックから4年後に開催されたアントワープオリンピックの顛末を描いた。金栗四三(中村勘九郎)にとっては、8年ぶり2度目のオリンピック出場となる。ところが、残念ながら史実の金栗は2度目のオリンピックも16位に終わっている。そんなわけで、第20話は「雪辱を期して臨んだオリンピックで、またもや負けた」という、いまいち盛り上がらない題材をどう料理するかが問われた回だったといえる。

 宮藤官九郎の答えは、オリンピックでの金栗の活躍と挫折を時系列順に描く手法を採らず、「時の流れによって生じた変化」を強調した構成にすることだった。つまり、金栗が日本人として初めてオリンピックに出場した1912年と8年後の1920年とで、スポーツを取り巻く環境が大きく変わったことを描いたのだ。

 金栗は8年前、オリンピックの渡航費集めで苦労したが(実際に苦労したのは周囲の人だったが)、今回は一切お金の問題は発生しなかった。国として選手をオリンピックに派遣する体制が整ったからだ。8年前は窮屈な列車での旅だった開催地への行程も、今回は快適な船旅へと改善された。

 金栗と三島弥彦(生田斗真)のたった2人だけだった日本選手団は、8年後には総勢15人の堂々たる選手団へと育った。8年前は異国の地で不安いっぱいだった金栗は、今や後輩たちの緊張を取り除き、励ましの言葉をかけることができるまでに成長した。スポーツが日本人に浸透し、それとともにスポーツを行う環境も整備され、金栗自身も人間的に成長した。一見すると、良いことずくめに思える。

 だが、期待された金栗は好成績を残すことができなかった。日本選手団はテニスで日本人初の銀メダルを獲得したものの、それ以外の競技は世界のレベルにまだまだ及ばなかったのである。

 オリンピックの3カ月後に開かれた報告会において、記者団は選手たちに「何してんだよ」「話になんねえよ」「この非国民」と罵声を浴びせた。だが、選手団の主将を務めた野口源三郎(永山絢人)や他の選手たちは堂々としていた。野口は「悔いはない」と言い切り、水泳の選手らは「日本もクロールを習得するために優秀な指導者が必要だ」と前向きに語る。金栗とともにマラソンに出場した選手たちは、「金栗さんのおかげで完走できました」と彼の功績をたたえた。

 だが、記者たちの追及は収まらない。この後、我慢ならなくなったスヤ(綾瀬はるか)が「せからしか!」と一喝して場を静まらせるという見せ場があったわけだが、それは置いておく。実はこの報告会でも、8年前との大きな違いが描かれていた。それは、何はともあれ世界の舞台で立派に完走した金栗が称賛されるどころか大いにバッシングされたことである。8年前は、惨敗して日本に帰ってきた金栗や三島が世間から袋叩きに遭うことはなかった。

 つまり、第20話では「オリンピックやスポーツ自体が相当程度人々に浸透した」というプラスの面と、「スポーツで好成績を残せなかった人を責める風潮が生まれた」というマイナスの面の変化の両方が描かれたことになる。

 振り返れば、日本人のオリンピック参加に道を開いた嘉納治五郎(役所広司)は、各国から集った若者が同じ条件で競い合う「平和の祭典」には勝ち負けを超えた価値があると信じ、オリンピック普及に邁進した。また、三島が所属していたスポーツ愛好会「天狗倶楽部」は、「ただ純粋にスポーツを楽しむために活動する元気の権化」をキャッチフレーズにしていた。この国で近代的な競技スポーツを推進した先駆者たちは、「スポーツを楽しむ精神」を持っていたのだ。このことは、第1話でオリンピックに日本が参加すべきかどうかを議論している時に嘉納が発した言葉が「楽しいの? 楽しくないの? オリンピック」だったことからもわかる。

 ところが、日本にスポーツが普及する過程において、この精神は置き去りにされてしまった。現代でも、特に国際大会において好成績を残せなかった、もしくは「敗因」をつくってしまった選手へのバッシングがたびたび起こる。脚本を書いたクドカンに風刺の意図があったかどうかは不明だが、結果的に第20話は「日本スポーツ史」という歴史の流れを描くとともに、100年後の現代に向けても問題提起を行った、実に「大河ドラマらしい回」だったといえる。

 さて、スポーツ振興を後進に委ねることを決意した嘉納は、同志として苦楽を共にしてきた永井道明(杉本哲太)に「50年後、100年後の選手たちが運動やスポーツを楽しんでくれていたら、我々としてはうれしいよね」と語り掛けた。なかなか味わい深い台詞である。

 自国開催である2020東京オリンピック・パラリンピック大会においては、日本人選手たちに並々ならぬ期待と重圧がかかることだろう。だが、まずは原点に返って楽しんでほしいし、我々観客も勝ち負けばかりにこだわらずに純粋に楽しみたいし、結果にかかわりなく健闘をたたえたい。そんなことを考えさせられた。

 次回からは、女子スポーツの普及に取り組む金栗の奮闘が描かれるようだ。NHK土曜時代ドラマ『アシガール』で足の速い高校生を演じた黒島結菜や、世界的に活動するダンサーの菅原小春など新キャストも続々と登場する。日本スポーツ史がどのように描かれていくのか、注目したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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