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卓球の女王・石川佳純が東京五輪に出られない?過密化する国際大会日程と世界ランキング

文=美山和也
卓球の女王・石川佳純が東京五輪に出られない?過密化する国際大会日程と世界ランキングの画像14月27日、ハンガリーで開催された世界卓球、混合ダブルスの決勝戦での石川佳純。右は男子選手の吉村真晴。(写真:AFP/アフロ)

 東京五輪の出場を懸けた、女子卓球選手たちによる戦いが始まったようだ。

 その第一ラウンドとなったのが、伊藤美誠&早田ひなのコンビが女子ダブルス決勝戦まで勝ち上がった世界選手権個人戦(4月21日から、ハンガリー・ブダペストで開催)である。4月28日に行われたこの決勝戦では、微妙な判定をめぐり伊藤が執拗に抗議したのは記憶に新しい。普段は冷静沈着な伊藤が猛抗議を行ったのは、国際大会における「1勝」が、東京五輪の代表枠に大きな影響をもたらすからだろう。

「女子卓球の五輪代表枠は3人。その選出方法は、2人まではシンプルで誰の目にもわかりやすい。2020年1月時点の国際卓球連盟(以下、ITTF)による世界ランキングにおける上位2名が、自動的にシングルスの代表とされますから。しかし、3人目はそうではありません。おそらく、もろもろを加味した上での、強化本部推薦枠となるでしょう」(テレビ局スポーツ部員)

 近年、日本の卓球レベルが上がったことは世界も認めている。卓球大国である中国でさえ、わざわざ、石川佳純、伊藤、平野美宇のコピー選手を用意して練習するほどだ。

 前回のリオデジャネイロ五輪では、日本の女子卓球は団体で銅メダルを獲得した。当然、東京五輪では金メダル獲得の期待も大きい。そうしたなかで出場を確実にするには、先述の通り「上位2名」に入らなければならない。しかし、その代表選出にかかわるランキングのポイント獲得法が少し変わった。国際大会の成績がポイントとしてカウントされるのは以前と同じだが、上位進出を果たせば一気に2000ポイント、3000ポイントを稼げる大会数が増えたのだ。

「伊藤が決勝戦で猛抗議した世界選手権の前と後とでランキングが変わったことからも、ポイント争いがいかに熾烈なものかがうかがえます。順位自体は変わりませんでしたが、国内トップの石川と2位伊藤の差は643ポイントだったのが、大会後は403ポイントに縮まった。伊藤が優勝していたら、国内女王の座は逆転していたでしょう。3位平野も、1760ポイント差で伊藤を猛追しています。国際大会で1回優勝すれば逆転できてしまう僅差といえます」(スポーツ紙記者)

 ITTFランキングのなかで眺めると、石川は世界6位、伊藤が7位で、平野は9位だ。石川は世界選手権前には1万4523ポイントを持っていたが、有効期限が切れたポイントもあり、大会後は1万3923ポイントに減らしている。伊藤は1万3880ポイントから1万3520ポイントに減らし、平野も1万2698ポイントから1万1760ポイントにダウンした。しかも、この3人だけが日本国内で突出しているわけではない。芝田沙季は13位で1万464ポイント、佐藤瞳は14位で1万195ポイント。彼女たちも、今後の成績次第では逆転可能な位置につけているわけだ。

27歳で五輪というジンクス

 この熾烈なポイント争奪戦について、こんな声も聞かれた。

「ブダペストでの世界選手権個人戦が、東京五輪への代表レースの実質的な幕開けとなりましたが、実際に五輪代表の枠を勝ち取るまでは、かなりの“体力勝負”となりそうです」(体育協会詰め記者)

 その理由は、今季から新しく設けられた大会が影響していると考えられる。1000ポイントを稼ぐことも可能な、「T2ダイヤモンド」というシリーズ大会が新設されたのだ。このT2ダイヤモンドは、7月にマレーシア、9月に中国、そして11月にシンガポールと計3回行われる。もしも3連覇を成し遂げられれば半年弱で3000ポイントの“荒稼ぎ”ができるのだが、その間、10月には中国での女子ワールドカップが、そしてシンガポール大会直前の11月6日には国別対抗の団体戦、チームワールドカップも開催される。さらに12月には、3000ポイントが見込めるグランドファイナルも開催予定だ。つまり、まさに“体力勝負”なのである。

「石川、伊藤らに限った話ではありませんが、獲得した時期が古いために、2019年内に順次“喪失”するポイントもあるわけです。だから、どこかの大会を休んでワールドカップだけに備える……なんて悠長なことはできません。稼げるポイント数が大きな大会ばかりですから」(前出・同)

 つまり、T2ダイヤモンドが加わったことで、卓球選手のスケジュールはさらに過密化したわけだ。となれば、体力のある若い選手がどうしても有利……という見方も可能になろう。1993年生まれの石川は現在26歳。対して今春高校を卒業したばかりの「みうみまコンビ」の伊藤、平野は、共にまだ10代である。

「かりにITTFランキングで石川が国内トップから転落し、伊藤、平野より下の『国内3位』となった場合、日本卓球協会が石川を推薦しない可能性も出てくると思います」(前出・同)

 また、21歳の佐藤、芝田の猛追も考えられる。というのも、石川の卓球スタイルには“弱点”があるのだ。

「近年の卓球は、“一撃必殺”の時代に入りつつあります。勝負どころで、パワー全開の強力スマッシュを打つスタイルですね。対して石川は、それほどパワーがあるタイプではなく、むしろラリーでの撃ち合いを長く続け、タイミングを見計らって『ドライブ』を放つことを得意とする。ドライブとは、ボールを下から打って回転を与えて加速させる手法。といっても、全力で放たれるスマッシュほどのスピードは出ないのですが」(前出・テレビ局スポーツ部員)

 ドライブはスピードがスマッシュほどには出ないゆえ、絶妙なタイミングを見つけるためにおのずとラリーも長くなる、という見方も可能である。つまり石川のスタイルは、ただでさえ体力を消耗するともいえるわけだ。

 日本の女子卓球界には、こんなジンクスがある。2012年ロンドン大会の平野早矢香、2016年リオデジャネイロ大会の福原愛は、共に27歳で五輪を戦った。そしてその後、2人は一線を退いている。石川はまさに、この27歳という年齢で東京五輪を迎えることとなる。日本女子は50年ぶりの金メダルを目指すが、女王・石川にとっては、この1年のタイトスケジュールを乗り切らないことには、その東京五輪への出場さえ危うい……ということにもなりそうだ。
(文=美山和也)

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