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『パーフェクトワールド』障害者と健常者の交際と破局を正面から描く…視聴者に重い問いかけ

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 松坂桃李が主演を務める連続テレビドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)の第6話が28日に放送され、平均視聴率は前回より0.2ポイント増の6.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 このドラマは、大学時代の事故で下半身が不随になった建築士の鮎川樹(松坂)と、高校時代の同級生・川奈つぐみ(山本美月)が繰り広げるラブストーリー。川奈は高校時代に片思いしていた鮎川に約10年ぶりに再会したが、スポーツマンだった彼は車いす生活を送っていた。やがて2人は付き合うようになるが、互いが互いを思いやるあまりに「自分がいないほうが相手にとって良いのでは」との思いが高まり、ついに別れてしまう。ここまでが第5話までに描かれた流れだ。

 とはいえ、まだまだ1クールの中盤であることから、視聴者のほぼ全員が「なんだかんだで鮎川と川奈はよりを戻すんだろうな」と予想していたことだろう。最終回なら「2人はそれぞれの道に進みました」という結末もあり得るが、中盤でそれをやってしまっては話が持たない。やはり恋愛ドラマの王道といえば、「恋人同士が別れ、いわゆる当て馬的な存在と一応は付き合うものの、やはり元カレ(元カノ)が忘れられずによりを戻す」という展開である。

 そんなわけで、第6話は大半の視聴者にとってある程度、想定の範囲内だったはず。前述の王道展開をそっくりなぞったようなストーリーが繰り広げられた。川奈はなし崩し的に幼なじみの是枝洋貴(瀬戸康史)と付き合い始め、あっという間にプロポーズされる。鮎川のほうはといえば、長年身の回りの世話をしてくれたヘルパーの長沢葵(中村ゆり)から「ずっとあなたが好きだった」と告白された。鮎川は戸惑いを隠せず、長沢の気持ちをすぐには受け入れることができないが、川奈は思いのほかすんなり是枝に乗り換えたようにも見える。傷心のときに優しくしてくれる相手に甘えてしまうことは誰しもあるだろう。

 ただ、「どうせこのカップルは成立しないんだろうな」というのが丸わかりの2組のカップルを見せられても、そこまで興味は持てない。筆者も途中から、「今回はやっぱりあからさまな“つなぎ回”だったかな」と割り切った気持ちになっていた。

 ところが、そんな第6話にもヤマ場が待っていた。「退院したら車いす生活になる妻のために家を建てたい」という高木圭吾(山中崇)が川奈の前に現れたのだ。彼は、たまたま雑誌で見かけた鮎川をアポなしで訪ねて相談しようとしたが、「力になれない」と断られたのだという。

 鮎川は自身の境遇を仕事に生かし、障害を持つ人にも利用しやすい建築物を設計することに積極的に取り組んできたはずだ。それなのになぜ、「将来車いす生活になる妻のために家を建てたい」との高木の願いを退けたのだろうか。

 その理由は、鮎川の口から明かされた。要約すれば、介護を必要とする人は「パートナーに負担を掛けたくない」と願っており、それは高木の妻も同じはず。自分にはそれが痛いほどわかるから、依頼を断ったというのだ。「自分を犠牲にしてでも要介護者に尽くす」という生き方をしてほしくない、と要介護者である鮎川は語った。

 このドラマはこれまでも、障害者も気を遣われるばかりでは心苦しいということを描写してきた。ここであらためて川奈と別れた本当の理由が鮎川の口から語られたことで、障害者や要介護者の抱く思いがズシンと重いかたちで視聴者に投げかけられたことになる。

 一方で、これに対する反論も劇中で語られた。自分の存在が負担になっていると思い詰める妻に対し、高木は「おれの幸せはお前を喜ばせることだ。それをお前は奪おうとしているんだぞ」と語りかける。この台詞は意味深い。川奈はこれまで「鮎川くんのために」と、あれもこれもしようとして疲弊し、ついには体調を崩して入院するまでになってしまった。だからこそ鮎川は、自分の存在が彼女を不幸にしていると感じて別れを決意したのだ。

 無私の愛は尊いのかもしれないが、愛されるほうは負担である。もし川奈が「鮎川くんが喜んでくれるから私もうれしい」といった考え方ができていたなら、鮎川も心苦しさを感じずに済んだはずだ。はっきりとは描写されなかったが、第6話のラストで川奈もこのことに気付いたようだ。「結局、障害者に対してどう接すれば良いのだろうか」とモヤモヤした気持ちになっていた視聴者も、パッと霧が晴れたような思いになったのではないだろうか。

 とはいえ、鮎川と川奈の関係は、まだまだモヤモヤしたまま続くようだ。あまりグダグダ展開が続くと、当て馬的存在である是枝や長沢をかわいそうに思う人が増えてきて、相対的に鮎川や川奈が優柔不断な悪者に見えてくる可能性もある。そのあたりのさじ加減は難しいと思うが、どう処理するつもりなのか、今後も注目していきたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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