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山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

生存率5%の起業、経験者だからわかる「失敗しない方法」…会社を辞める前にすべきこと

文=山崎将志/ビジネスコンサルタント
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第一関門と第二関門

 最初にお伝えしたいことは、アイデアだけではビジネスにならないということです。私が経験上いえることは、アイデアが100あったとして、実際に事業として成立するのは1つあるかないかくらいです。ですから、会社を辞めて貯金を全部はたいて事業を始める前に、テストをしてください。それも、できるだけお金のかからない方法で試してください。

 どんな商品でもお客さんに手に取ってもらうためには、この商品にしかない特徴が必要です。それを専門用語でUSP-Unique Selling Pointと言いますが、まずこの製品のUSPは何かを考えてください。もちろん、USPは当然考えているという人もいるかもしれませんが、お客さんが「これはすごい!」と言わなければ意味がありません。

 まずはサンプルを用意してください。モノであればサンプル商品を、サービスであれば体験会のようなものを準備してください。この段階では完璧な製品は必要ありません。機械であれば配線むき出しの試作品でもいいですし、サービスであれば貸し会議室で十分です。場合によっては手書きのスケッチやパワーポイントの資料でも構いません。重要なことは、これから出そうとしている商品やサービスがなんなのか、それがどう役に立つのかを相手に一目でわかるようにすることです。

 それが準備できたら、サンプルを少なくとも20人に見せてください。気を使って本音を話してくれない可能性がある人は、除外してください。対象はもちろんその商品・サービスのお客さんになり得る人です。知り合いに声をかける、街頭で声をかける、インターネットで集めるなど、いろんな方法が考えられますが、とにかく最低20人を集めてください。ここで20人程度を集められないようであれば、商品に対する思い入れが小さすぎるか、営業力がなさすぎるか、あるいはその両方かです。テストマーケティングの第一関門以前の問題がありますので、この時点でギブアップした方がよいでしょう。

 さて、話を聞いてくれる人が集められたとします。もし大部分、そうですね8割以上の人が「すばらしい、こういうのが欲しかった!」と言わないなら、そこでこのプロジェクトは中止です。あなたの考えているものは、取るに足らないものだということがわかったのです。まだ仕事に就いていますし、貯金も残っています。これは失敗ではありません。きっぱり諦めて次の企画を練りましょう。

 しかし、8割以上の人が「すばらしい!」と言ってくれるならば、第一関門はクリアしたことになります。そうしたら、次の質問をしてください。

「いくらならこれを買いますか」とできるだけ具体的な値段を言ってもらうように頼みます。そして、もしこれが相手の言う値段で手に入るとしたらどうするかを次の3つの選択肢から選んでもらってください。

・必ず買う
・今使っているものの代わりとして買う
・買わない

 さらに質問を続けます。一年で何回くらい買うのか、今使っているモノは何か、今使っているもので満足しているか、不満があるとしたら何かなど、考え付く限りの質問をします。そこで得られた答えを、きちんと記録します。

 あらかた聞きたいことを聞き終えたら、ひと呼吸おいてこう尋ねてみてください。

「実はこれを開発するために資金が必要です。その一部で構いませんから投資する気はありますか」

 この質問に、イエスという人がいなければ、口ではすごいと言ってはいるものの、内心ではそれほどでもないと考えているということです。この第二関門をクリアできないとすれば、やはりこれはうまくいかない商品と考えたほうがよいでしょう。

見えている範囲のリスクはすべて潰す

 一人でも「投資したい」と言ってくれる人がいたら、まだ可能性が残っています。買ってもいいと言ってくれた値段を一番高いものから低いものに並べて、真ん中の8割の値段の平均値を計算します。これが、仮の販売価格です。

 そうしたら、次は原価計算です。これは商品なのかサービスなのかによって違いますし、商品でもカテゴリーによって異なりますから一概にはいえませんが、ざっといえばモノなら仮の販売価格の25%以内でつくることができるかを考えてください。

 それができる可能性があれば、最初の商品を少しだけつくります。少量ですので高くつくと思いますが、量産した時に25%以内に収まるのであれば問題ではありません。つくったら試しにどこかのお店に置かせてもらってください。インターネットで売ることも考えられますが、きれいなウェブページをつくったり、広告費がかさんだりと、意外にお金と手間がかかります。ですから、その商品を売るのが得意そうな人に、マージンを払って代わりに売ってもらってください。

 ここである程度売れるようであれば、いよいよ会社を辞めて独立するかどうかを検討する段階に初めて入ることができます。

 起業家は大きなリスクを取っていると思われがちですが、実はこのようなテストを繰り返すことでリスクを最小限にしています。そして熱い気持ちを持ちつつも冷静な判断をし、無理とわかったらきっぱり諦めます。ただでさえ恐怖でいっぱいの起業家ワールドですから、見えている範囲のリスクはすべて潰すことで、乗り越えているのです。

 起業を考えている方は、くれぐれも慎重に最初の一歩は踏み出すことをお勧めします。それがうまくいけば、本当に楽しい世界が待っています。
(文=山崎将志/ビジネスコンサルタント)

●山崎将志
ビジネスコンサルタント。1971年愛知県生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。コンサルティング事業と並行して、数社のベンチャー事業開発・運営に携わる。主な著書に『残念な人の思考法』『残念な人の仕事の習慣』『社長のテスト』などがあり、累計発行部数は100万部を超える。
2016年よりNHKラジオ第2『ラジオ仕事学のすすめ』講師を務める。
最新刊は『儲かる仕組みの思考法』(日本実業出版社)

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