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舘内端「クルマの危機と未来」

物流業界、エンジン車からEVへ移行本格化…絶大なコスト削減&人手不足解消の効果

文=舘内端/自動車評論家

 一方、eCanterの電費はメーカー発表でキロメートル当たり521Wh(ワット時)である。10万キロメートルでは5万2100kWhとなる。小規模事業者の契約電力価格を1kWh当たり14.99円とすると、10万キロメートル走行の電気代はおよそ78万1000円である。

 エンジンCanterからeCanterに代替すると、年間10万キロメートル走る事業者は1台当たり76万9000円の燃料代の削減が可能だ。10台保有では769万円もの削減となる。

削減は燃料代だけではない

 そればかりかエンジンや変速機のオイル代、オイルフィルター代、クラッチ、ブレーキの整備代などが削減可能になる。Canterは2トン積みの小型トラックなので、上記の整備もやりやすいが、10トン積み等の大型トラックになると、クラッチの交換やブレーキパッドの交換などは重整備になり、費用もかさむ。

 EVトラックのメリットはそればかりかドライバーの疲労を軽減する。結果としての事故の減少は保険代の削減も可能にする。荷物を満載したトラックは上り坂でスピードが落ちる。変速ギアを1段下げるとエンジンの回転数が上がり、牽引力が増し運転が楽になるのだが、エンジンの回転数はなるべく下げるように管理されており、ギアはやたらには下げられない。ドライバーは神経をすり減らす。一方、トルクが大きなEVは楽々坂を上がる。そうした運転の容易さが他のドライバーに伝わると、ドライバーも集めやすくなり、人手不足も解消する。

 ただし、実際の経費の増減にはエンジンCanterとeCanterの価格の差額や電池の寿命などを考え合せなければならないのだが、いずれ解決に向かうことは確かである。となれば、EVトラックの登場は物流業界に革命を起こすことになるに違いない。

中国製バスの輸入が始まった

 自動車産業は日本の基幹産業であり、品質と技術の高さはアジアの新興国の追従を許さず、中国製自動車の日本上陸は考えられないとされてきた。しかし、こうした常識は崩れた。中国製のEVバスが沖縄、京都、会津を走り始めた。評判が良い。

 輸入されたのは中国のBYD社製のEVバスだ。今後は台数の増大のほか、他の地域にも広がりそうである。BYDはリン酸鉄のリチウムイオン電池を開発、生産し、自動車メーカーを買収して一躍、中国のEVメーカーとしての地位を築いた。現在ではEVのバス・トラックの開発、生産に集中している。日本国内にも支社を出し、7人乗りのマイクロEVバスの輸入を計画している。

始まるEVバス・トラックの開発、生産

 BYDには小型から大型までのバスとトラックのフルラインEVモデルがある。中国政府のEV戦略に乗ったものだ。

 EVバス・トラックを手掛けるのはBYDだけではない。世界の商用車の2大巨頭であるダイムラー(eActors/eCitaro)とボルボ(Vera)も開発、虎視眈々と市場の拡大を狙っている。その先頭に立つのが、ダイムラー傘下の三菱ふそうバス・トラックと、ボルボ傘下のUDトラックス(元日産ディーゼル)である。ここに米国のテスラ(セミ)、フォード(Eトラック)、VW傘下の独MAN(Lion’s City 12E)等が加わり、EVのバス・トラックの開発、販売はすでに戦闘モードである。

 それにもかかわらず、日野自動車、いすず(注:「ず」の正式表記は踊り字)からはEV開発の槌音が聞かれないのは、国産EV乗用車開発の大幅な遅れとともに残念である。

(文=舘内端/自動車評論家)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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