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曽和利光「人と、組織の可能性を信じる世界のために」

マネジメント能力の低いマネジャーでも組織がうまく回る方法

文=曽和利光/株式会社人材研究所代表

問題の性質によって関係性を変える

 さて、どちらの「良い相性」で組み合わせを考えるべきでしょうか。それには原則があります。まず「同質」は、良好な関係を築くスピードが速いため、もし組織の問題が退職やメンタルヘルスなどにあるのであれば、これが適当です。しかし、「同質」の関係は、時期が経つにつれてマンネリ化していき創造性や生産性を下げることがあるのがデメリットです。勝ちパターンが決まっているような成熟した業界や仕事であれば、特に問題はないかもしれませんが、クリエイティビティが必要な仕事であればやや心配です。

「補完」の関係は、異質ではあるので相互理解をして良好な関係を築くのにやや時間がかかります。よく半年はかかるとも言います。退職などの問題がなく、その期間を待てるのであれば、この関係が良いでしょう。「補完」は「同質」と異なり、異質なものが補完することで創造性を高めることがあります。創造性の向上が問題なのであれば、「補完」が最適な関係でしょう。

パーソナリティテストを導入して可視化する

 
 この「関係性のマネジメント」ですが、経営者や人事の直感で行うことはあまりお勧めしません。人は人を見る際にかなりの心的バイアスがあるからです。自分と似ている人を高く評価する類似性効果や、属性の固定観念の先入観に縛られてしまう確証バイアス、一つの美点があればすべてOKと評価してしまうハロー効果などなど。ですから、人が直感で見るのではなく、パーソナリティテストを導入して、きちんとデータなどで可視化し、それをもとに「同質」とか「補完」とかを考えていくことが必要です。

 世の中にパーソナリティテストは無数にありますが、関係性を見るのに最もお勧めなのはヒューマンロジック研究所が提供しているFFS(Five Factors & Stress)です。もしご関心がございましたら、ご紹介もできますので、弊社人材研究所までお問い合わせください。また、他のテストでも、全社員に実施して、パーソナリティで社員をクラスターに分けて、上司部下の相性の良し悪しを分析したりすることで、便宜的に似たような効能を得ることもできないこともありません(ただし、精緻なものは難しいですが)。

パーソナリティで最適化できないなら

 以上のように、もしマネジャーの能力向上がすぐには不可能なのであれば、異動のタイミングなどで、できる限りマネジャーとメンバーの関係を良い相性にすることで、今の能力やスキルのままで、良い上司部下関係がつくれるのです。

 しかし、当然ながら、会社組織の配置を、パーソナリティだけで最適化することはできません。能力やスキルの観点もありますし、家庭の問題などもあります。ただ、「パーソナリティ的に最適な上司部下の関係になっていない」ということが明確になっていることは有益なことです。まず、退職やメンタルなどの問題が生じやすいことがわかるわけですので、慎重にウォッチしケアすることができます。

 また、直感ではなくパーソナリティテストなどで可視化した上で相性マッチングを行っていれば、お互いの「違い」がなんなのかを理解することで、ハレーションが起こらないように努力することだって可能です。

個力の不足は、仕組みでカバー

 
 今回は「マネジャーのマネジメント力」に注目して考えてみましたが、その他の組織問題においても同様の考え方は有効です。つまり、なんらかの問題を解決するのに、個人の力を高めることだけに頼るのではなく、人間関係の精査や人事制度や組織構造など、仕組みを良いものにすることによって、個がすでに持っているポテンシャルを開花させるということが有効であるということです。

「組織の問題を個人のせいにするな」という格言もあります。人事や経営者におかれましては、一度こういう視点で自社の組織問題を考えてみることをお勧めいたします。
(文=曽和利光/株式会社人材研究所代表)

曽和利光/人材研究所代表

曽和利光/人材研究所代表

京都大学教育学部教育心理学科卒。新卒でリクルートに入社、2009年まで人事や人事コンサルティングを行う。人事GMとして、最終面接や人事担当者トレーニングなども担当。その後、ライフネット生命などのベンチャー企業の人事責任者を経て、現職。現在は、日系大手から外資、ベンチャー、中小企業様に至るまで、様々な会社の、人事や採用に関するコンサルティング、トレーニング、アウトソーシングの事業を推進中。
日本採用力検定協会理事/日本ビジネス心理学会理事/情報経営イノベーション専門職大学客員教授
株式会社人材研究所

Twitter:@toshimitsu_sowa

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