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老人ホーム、倒産激増…介護報酬の不正請求が原因も、“終の棲家”問題が深刻化

構成=長井雄一朗/ライター
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介護報酬の不正請求が引き金で倒産も

――具体的な倒産事例を教えてください。

 岐阜県の環境福祉基構が18年1月19日に岐阜地裁から破産開始決定を受けました。負債総額は約4億5000万円です。介護付き有料老人ホーム「木香の郷」、介護福祉施設「あんじゅの杜」を運営し、11年9月期には売上高2億4000万円を計上していましたが、13年9月に介護報酬の不正請求が発覚。当時の経営陣が看護師が勤務しているように装い、約465万円をだまし取った容疑で逮捕されたことで社会的信用が低下して、破産に至りました。

 また、東京のあそかライフサービスは18年3月28日に東京地裁から破産開始決定を受けました。負債総額は約3億5850万円です。同社と関係性の深い社会福祉法人の公金横領が発覚し、同社も不正に関与していたことから信用が低下、従業員の退職が相次いだことから事業継続が困難になりました。

 また、今年の1月ですが、未来設計の倒産は大きな注目を集めました。同社は首都圏を中心に37カ所の有料老人ホームを経営していましたが、東京地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は53億8600万円で、有料老人ホーム経営会社としては過去二番目に大きな規模です。

 同社は、認知症、終末期ケアの有料老人ホーム「未来倶楽部」「未来邸」を運営し、創業から年間2施設のペースで開設するなど積極的な展開を見せていました。設備が充実した大規模施設も多く、売上高は右肩上がりで推移し、福祉・介護業界の中では成長企業として存在感を示していました。しかし、旧経営陣らが入居者からの預り金を売り上げに計上し、運転資金や創業者への高額な報酬に流用したことが明らかになり、資金繰りの悪化が露呈したのです。

 未来設計の事例はやや特殊ですが、環境福祉基構とあそかライフサービスの件は不正が引き金となり、後者は最終的に人手不足倒産に陥っています。

――今後の業界動向をどう見ますか。

 政府は10月の消費税率引き上げに伴う施設・事業所の出費を補填するため、同月に介護報酬を改定し、0.39%引き上げる予定です。また、人手不足に対応するための改正出入国管理法では、介護も外国人の新たな在留資格の対象になりました。

 これらはプラスになり得る要素ですが、今後も人手不足による人件費上昇は避けられず、それが経営の足かせになる可能性が高いでしょう。福祉・介護業界は景気が悪いときは人手が集まりますが、好況になると人手が他業種に流出しやすいという、景気の動きと逆行する傾向があります。

 いずれにせよ、同業他社との競合が激しく経営手腕が試されます。介護職員が不足するなかで相応のサービスを提供できない業者は、淘汰される可能性が高くなっています。今後も同業界の倒産件数は高水準で推移すると見られ、その動向から目が離せない状況が続くでしょう。
(構成=長井雄一朗/ライター)

【※1】
本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

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