この年、6月26日に開催したセコムの定時株主総会で、飯田氏は体調不良を理由に欠席した。新社長に就く中山氏は、会長・社長の解職についての説明に追われた。ある株主が「飯田氏は、ぼちぼち卒業され、若い人に名実ともにやらせる時期ではないか」と、暗に退任を求めた。

 この時、新たな取締役候補には尾関氏が含まれていた。飯田氏は娘婿への「事業承継」を心に描いていたため、「力をつけてきた前田・伊藤両氏を切った」(前出関係者)とみられている。中山氏はワンポイントの“つなぎ役”とみなされてきたが、実際、その通りになったのだ。

オリンピックはセコムの原点

 セコムの2019年3月期連結決算は、売上高が前期比4.5%増の1兆138億円、営業利益が同3.9%減の1302億円、純利益が同5.8%増の920億円だった。警備サービスの契約数が伸び、売上高が初めて1兆円の大台を超えた。西日本豪雨や台風などの自然災害の影響で保険事業の採算が悪化し、営業減益となった。

 尾関新社長の初決算になる20年3月期の連結決算は、売上高が19年同期比2.4%増の1兆380億円、営業利益は同1%増の1315億円、純利益は同9.8%減の830億円となる見込み。米国で手がける投資事業の運用益が減ったことで営業外収益が減るほか、会計上、税負担が増えることが響き、最終利益は減益になる。

 東京オリンピックはセコムの原点だ。1964年の東京五輪において、代々木の選手村の警備を請け負ったのが日本警備保障、現在のセコムである。日本警備保障をモデルにしたテレビドラマ『東京警備指令 ザ・ガードマン』(TBS系)がヒットしたことで、警備業の仕事が認知された。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、セコムや綜合警備保障(ALSOK)は大手通信会社と組み、バーチャル警備に挑む。大容量のデータを瞬時に送れる次世代の通信規格5Gの時代になれば、業容は様変わりするだろう。カメラが見てAI(人工知能)が危険の有無を判断する。東京オリンピックは、そんなバーチャル警備の実験場となる。
(文=編集部)

情報提供はこちら