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【森友問題】籠池氏「値引き根拠の埋設ゴミは“なかった”」…財務省側が値引きを主導

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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Q:世間では、お金がない森友学園籠池さんが、役所に無理難題を振りかけ、格安値下げをやらせたとみられています。

「印象操作でしょう。私ごときが何かをしても、できないですよ。もしそのようなことができるのなら、国は潰れていたでしょう。国を相手にしたさまざまな要望や要求を持ち掛けるその道のプロがいますが、そうした無理難題をはねのけてきたのが国の省庁です。近畿財務局の亡くなられたAさんも、立ちはだかってきたひとりでしょう」

Q:つまり、ないゴミを理由にして国有財産を値引くなど、国が主導して行わない限りできないというのが籠池さんの見解ですか?

「安倍首相の指図の上に立って格安値引を行い、その過程で役人たちも犠牲を払わされたということでしょう」

Q:籠池さんの「値引きの根拠のゴミは無かった」発言から、事態の全貌が見えてきました。9月4日の4者会談、そして3月11日の杭打ち過程で見つかったとされる埋設ゴミの発表過程では、施主である籠池さん抜きで物事が進められていました。森友事件で問われなければならない核心点は、国有財産の根拠なき格安値引きを進めてきたのが、国自身であることがわかってきました。国有財産を根拠なく格安で払い下げた背任罪、それらの事実をかき消す契約決裁文書の改ざん、そして公用文書等毀棄罪の事実と立件、その解明が問われています。今日はありがとうございました。

籠池発言で森友問題の最終扉が開かれた

 森友事件は、森友学園が保守的教育を幼稚園で終わらせず、義務教育まで続ける意図をもって小学校建設が進められ、その試みに賛同した安倍昭恵氏の援助を得て、国有財産の不法な払い下げが行われた。

 これまでは、一般的には学園の理事長である籠池氏は、その主犯であると考えられてきた。自分たちの要求を貫くために、行政に対して無理難題を持ち掛け、政治家も使ってタダ同然の払い下げを行わせたとみられてきたのである。
 
 ところが今回、値引きによる売却は、籠池氏から要望もしていなかったこと、実際には存在しない埋設ゴミを理由に値引きを画策してきたのは、むしろ国であるという驚く発言が、籠池氏からなされたのである。

 これまで、新たなゴミ問題は、16年3月11日に森友学園側から近畿財務局に連絡があったことが端緒となっていた。ところが、籠池氏から経過を聞くと、その5日も前に委託業者である藤原工業が事実を知っていて、施主である籠池氏に連絡をすることなく、見つかったゴミを理由に工事を勝手にストップしていたというのである。しかし、その後の事実検証からいっても、新たな埋設ゴミはなかったことがわかっている。では、藤原工業は、なんのためにゴミがあると偽り、工事をストップしたのか。
 
 この事件を追跡してきた筆者は、この森友問題の主犯が籠池氏だという論調に、これまでも違和感を持っていた。籠池氏は、証人喚問で安倍昭恵氏からの100万円授受をよどみなく答え、森友事件が公になる朝日新聞のスクープ報道にあたっての記者取材では、隣接地の10分の1である1億3400万円で売買されたと答えていた。こうした籠池氏の受け答えを聞いていると、新たなゴミが見つかったとされた経緯は、よくわかる。

その時点では、籠池氏は、新たな埋設ゴミの存在を信じ切っていて、そのことで値引くのは当然と考えていたことや、存在しないゴミを理由にして値引かせたのでないことは想像できる。

 その後、安倍首相から「しつこい人」と切り捨てられ、小学校開校ができなくなって以降も、籠池氏は、森友学園をめぐって何が行われていたのかを情報発信し続けた。校舎建設を設計・施工してきたキアラ設計と弁護士がメールで、深部には埋設ゴミがないことを隠しておこうと密談していることを明らかにしたり、事実を国民に伝える側にいた。
 
 約9億円の国有地を、存在しないゴミを理由にして8億円値引くというのは、前代未聞の国家的な犯罪である。籠池氏がその絵を描き仕掛けたとするストーリーは、背後に国の存在と大きな闇を感じる。無理な値引きのために担当していた近畿財務局の職員が自死し、埋設ゴミに関与した藤原工業の下請け業者が、やはり自死しているのである。今回、籠池氏から「値引きの根拠となるゴミはなかった」という発言がなされ、その闇の実態に光が当たり始めたといえる。ゴミの存在のでっちあげは、国(近畿財務局や国交省)の下に行われていたことが徐々に明らかになり始めた。

籠池発言をきっかけに真実が見え始めた

 国民が目的の実現のために行政に働きかけることや政治家に動いてもらうことは、それが賄賂などの不法行為を伴わなければ、問題がない。もちろんその目的の内容については、賛否両論があって当然である。森友事件では、根拠のない不当な格安払い下げが行われた。当然、国有財産の管理と売却に当たって、行政上の権限を持って施行した官僚の不法行為は、背任や改ざん、公用文書等毀棄の罪として問われることになる。

 今回、籠池氏の発言によって明らかになったことは、森友学園から依頼を受けて校舎建設事業の設計・計画を行っていたキアラ設計事務所や、校舎建設を請け負っていた事業者たちが、場合によっては施主を飛び越して国(近畿財務局、大阪航空局)と相談したり、存在しないゴミを証拠立てるために試掘写真の偽装を手伝っていたということだ。

 森友学園側の業者というよりは、むしろ施主とは独立の意思を持って、この件では動いている。キアラは先日(6月5日)の別件裁判の公判で、籠池氏に補助金申請書を見せず、施主として押捺させていたことを証言した。一方、藤原工業は、国に言われて「いい加減に」「深さを意識せず」試掘したことや、写真を偽装したことを回答している。両者とも国と連携している事実が浮き彫りになっている。そして森友学園の補助金詐欺事件では、この両者は、共謀者として訴状に記載されながら家宅捜査も受けず、特別扱いを受けている。

 ここで、改めて本件に関する経緯を整理してみたい。

 森友事件は、一度ゴミを撤去したその地下深部に、さらに100倍もの2万トンの埋設ゴミがあるという国の荒唐無稽な主張を検証することから始まった。調査の結果、「値引きの根拠となるゴミの存在を否定する証拠」が(1)~(3)のように次々と見つかった(※2)。

(1)大阪航空局自身が、3m以深は堆積層になっており、埋設ゴミはないという調査資料を作成していた。

(2)値引きの根拠として国が示した2万トンの埋設ゴミの計算式は、計算数値を間違い、会計検査院は「根拠不十分」と断罪した。

(3)事業活動に基づき報告しなければならない産廃マニフェストでは、約194トン、2万トンの100分の1となっていた。しかもその種類は「新築系混合廃棄物」であり、埋設ゴミは「ゼロ」であった。

 次に、検証に入ったのは、地下深部から掘削したという試掘写真資料があった。
 
 値引きの根拠とされた3m以深にある2万トンのゴミの存在は、(1)~(3)の点から否定された。しかし、それを覆すものとして、国(近畿財務局、国交省)が示したのが、2種類の試掘写真資料であった。

 近畿財務局が撮った「17枚写真資料」(16年3月30日)には、学園用地から掘り出したとするゴミの山が示されていた。そこに写っていたゴミの山が、実際に学園用地から掘り出されたものであれば、大変な量である。ところが、それを掘り出したとする試掘穴は、1カ所しか写っていなかった。そこで埋設ゴミを深部から掘り出したことがわかる試掘穴の写真の提出が求められ、国交省が提出したのが、「21枚写真資料」(16年4月5日)であった。

 しかし、これらの写真資料は、同一箇所の写真を異なる箇所の写真と偽っていたことがわかった。値引きの根拠資料としては要件を欠き、その点は国も国会で認めた。また、その上に「21枚写真資料」のうち、3m以深にゴミがあるとした唯一の試掘穴(A工区No.1)の写真にも、デジタル写真で解析すると3m以深にはゴミ層はないことがわかった(いずれも本ニュースサイトで報告済み)。

 結局、新たな埋設ゴミが出たとする国の主張は、(1)~(3)の資料でも否定され、試掘写真資料は、偽装されていたことがわかった。このような調査報道の結果と今回の籠池氏の発言「値引きの根拠となるゴミは無かった」を加味した時、財務省近畿財務局と国交省大阪航空局による犯罪行為は、もはや動かぬ出来事といえる。

写真偽装から偽装セット問題に

【森友問題】籠池氏「値引き根拠の埋設ゴミは“なかった”」…財務省側が値引きを主導の画像3※写真2:「17枚写真資料」ここに写った山のようなゴミは、どこから運んできたか?

 そして事態は、「17枚写真資料」に写っていた膨大な埋設ゴミの山は、学園用地から掘り出されたものでなければ、どこから運んできたのかという問題に移りつつある。廃棄物処理法では、廃棄物は処分場や保管場所以外の場所に、むやみに投棄したり、保管することを禁じている。写真に写っていたゴミが、他の場所から持ってきたとなると犯罪行為である。工事を請け負っていた藤原工業は、その責任を問われることになる。もちろんその場所に立ち会い、事態の全貌を知っていた近畿財務局や大阪航空局の役人も責任を免れない。
 
 試掘写真の撮影に当たり、試掘工事を実施した藤原工業は、学園用地から掘り出したのでなければ、どこから持ってきたのか。また、その運搬を誰に行わせたのか。下請け事業者の関係者が17年3月に亡くなっているが、その事業者が運搬にかかわったのか。森友ゲート事件の最終章の始まりである。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

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