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阿部誠「だまされないマーケティング…かしこい消費者行動:行動経済学、認知心理学からの知見」

コカ・コーラ飲用時、ペプシでは反応しない脳の部位が反応…ラベル事前提示の条件下で

文=阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
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 結果は、日常条件の評価は分析条件の評価より有意に高くなりました。つまり、評価をまったく期待されなかった自然体の被験者は、細かい評価を要求されたテイストテストの被験者と比べて、飲料をより美味しいと感じたのです。

 また、いずれもテイストテストを行うと告げられた直観条件と分析条件を比較すると、どちらの評価のほうが高いかは飲料によって違いました。このような結果になった理由としては、分析条件の被験者が、日常飲むときに重視する飲料の特性ではなく、評価を要求された個別属性に対して特段の注意を払ったことが挙げられます。

 そして、これら個別属性の中で、より重視されるものがポジティブな属性であれば直観条件の評価より高くなり、より重視されるものがネガティブな属性であれば直観条件の評価より低くなってしまいます。普段飲むときには気にもかけない渋味やエグミなどの属性が評価項目にあったり、ノドで感じるような属性が評価項目から欠けていたりすれば、これらの影響を受けて総合評価が変わってしまうのです。

 さらに、日常・直観・分析条件の間では、被験者の飲み方にも、大きな違いがありました。一口当たりの平均量も全体量も、直観・分析条件は日常条件に比べて少なかったため、評価に必要な分量だけを飲むという傾向がみられました。口につけた回数は、分析条件が直観条件や日常条件より多かったため、属性別評価のためテイスティングを慎重に行っていたことがうかがえます。

 これら飲み方の違いも直接的、間接的に味覚の判断に影響を与えるでしょう。たとえば炭酸系の飲料は、一度にある程度の量を飲まないと、ノドで爽快感を感じられませんし、少量では舌に十分な酸味や刺激を与えられません。

 私は大のビール好きで、飲みに行ったときは最初から最後までずっとビールです。アメリカに住んでいたときは、法律で禁止されていないので、自分でビールをつくったこともあります(サミエルアダムスのような味だと友人からは好評でした)。国産4社の違う銘柄を置いている居酒屋などでは、いろいろなブランドを混ぜて注文して当てっこをします。合宿など、旅館でビールを飲むときには、必ず1本1本違うビール、発泡酒、新ジャンルを混ぜて買ってきて、みんなでブラインドテイスティングをします。

 それでも相変わらず正解を外してしまうことに、最近は慣れてくるとともに、納得しはじめています。やっぱり自分もラベルを飲んでいるんだなあと……。
(文=阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)

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