山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

LIXILは“オーナーもどき”潮田氏と決別すべき…居住する外国へ本社移転画策の愚かさ

オーナーもどき経営者は去れ

 私が潮田氏のことを「オーナーもどき」と呼ぶのは理由がある。潮田氏は創業家であるが、2代目で創業者ではない。またLIXILは数社が統合された会社なので、ほかにも創業家が存する。

 また、潮田氏はそもそもLIXILの株式を3%程度しか保有していない。これらの事実から、同氏はLIXILのオーナーではない。資本持ち分的には経営支配権を有しないし、指名委員会議長や取締役会議長でもなくなったので、機能的な支配権も失った。6月の株主総会で取締役も辞任すれば、一般株主と同様な立場の関与者となる。

 そんな潮田氏が、LIXILの本社をシンガポールに移転することを画策していたというのだから呆れる。前回記事に書いたことだが、シンガポールに居住している潮田氏は自らへの税制の制約から、日本には年の半分以上滞在できない。シンガポールと日本との往来を忌避して、自らが預かった会社のほうを自宅近くに持ってこようとしていたのだとしたら、経営者の道楽、いや、わがままもこれに極まれりというほかはない。

 株式所有が少数でも、創業家出身者が実質オーナー経営者のように振る舞っている上場企業は珍しくない。トヨタの豊田章男社長が所有するトヨタ自動車の持ち株比率は0.1%にすぎないが、その求心力はいうまでもない。

 潮田氏が昨年11月にCEOに復帰してから、LIXILの株価は急落した。昨年12月25日は昨年来安値となる1,270円となり、昨年高値3255円(1月23日)より60%も下落した。現在も1,359円のまま(5月24日)である。潮田氏への評価を市場も共有していると見ることができる。

 創業家出身の経営者への評価は、それぞれの実績で決まることも多いのだが、経営実績の矩を越えて存在感を発揮してしまうのが、私の言う「オーナーもどき経営者」ということだ。オーナーもどき経営者を実質的に支えてくれる「番頭経営者」がいない場合は、オーナーもどき経営者は、その会社に益をもたらすことは少ない。いっそ、「君臨すれど統治せず」のポジションに入ってくれたほうが、皆の幸せとなる。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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