LIXIL経営権争奪戦、議決権行使助言会社が株主を“ミスリード”の懸念

 実はLIXILも伊奈氏の振る舞いを守秘義務違反とみて「何らかの法律違反を犯しているとして伊奈氏を排除できないか」と東京証券取引所に相談を持ち掛けたようだ(LIXILはこれを否定している)。これに対し東証は「違反を告発できるような定めはない」としてはねつけたといい、グラスルイスがこうした情報をつかんでいれば、今回のような推奨は出てこないだろう。

 同じく議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、2015年度の株主総会でLIXILの社外取締役だった数土文夫JFEホールディングス特別顧問の社外取締役再任に反対している。「JFEはLIXILの取引先であり、社外取締役としての独立性に問題がある」というのが理由だったが、LIXILは取引関係を否定。念のために筆者も信用調査会社に照会してみたところ「両社の間に取引はない」とのことだった。議決権行使助言会社にはすでに、誤った情報を発信して顧客の判断を誤らせた過去があるのだ。

 企業法務に詳しい香川大学法学部法学研究科の溝渕彰教授は「議決権行使助言会社は世界の議決権の2割を動かす力を持つと言われるが、その情報収集力や意見には問題も多い」と指摘している。

難しい銀行・生保分の票読み

 波乱要因はそれだけではない。一般の個人株主の場合、議決権行使書には会社側提案に「○」をつけて返送する投資家が多く、これもまさかの結果を招きかねない波乱要因になりうる。しかも委任状に添えられている注意書きがやや紛らわしく、委任状と議決権行使書の返送の仕方によっては、株主の考えとは逆の票としてカウントされてしまう恐れがある。委任状と議決権行使書の送り方について理解があやふやだと、株主提案に賛同したつもりが会社提案に乗ったことになってしまうわけだ。6月11日に瀬戸氏と伊奈氏が「株主提案に賛成する株主の方への注意喚起のお知らせ」と題するプレスリリースを出したのはそのためだ。

 銀行や生命保険会社などの票読みも難しい。これまで企業内で深刻な問題が発生し社内で解決できないケースでは、事業資金の貸し手であり、株式を持ち合ってきた銀行がガバナンスを利かせることも少なくなかった。しかしLIXILのケースでは「銀行に特段の動きはない。銀行から社外取締役を迎えておらず、取締役会で銀行の意見が出るわけでもない」(関係筋)という。

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