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成馬零一「ドラマ探訪記」

『わたし、定時で帰ります。』は“問題作”である…有能社員が職場の害悪となる恐ろしい現実

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 職場が抱えるさまざまな問題を描き、反響を呼んだドラマわたし、定時で帰ります。』(TBS系)が、ついに最終回を迎える。

 火曜夜10時から放送されている本作は、ウェブ制作会社・ネットヒーローズを舞台にしたお仕事モノのドラマだ。主人公の東山結衣(吉高由里子)は32歳のディレクター。仕事を効率よく片付けて定時に退社することをモットーとしており、行きつけの中華料理店でビールを飲むのが何よりの幸せだ。

 そのゆるいタイトルから、もっと気軽に楽しめるドラマになると想像していたが、内容は真逆で、「定時で帰る」と気軽に言えない職場の問題点を掘り下げた作品だった。

 かつて、過労による転倒事故を起こして意識不明の重体となった結衣は、仕事で無理をしないようにと心がけている。彼女の仕事観は「働き方改革」が叫ばれる現代日本の方針とマッチしており、若い社員ともうまく付き合えている。

 しかし、誰もが結衣のように生きられるわけではない。そんな仕事をめぐる「建前と本音」「理想と現実」が職場の中で衝突する様子を、本作は描いていく。

 結衣と同世代の三谷佳菜子(シシド・カフカ)は、不器用ながらも一生懸命働くことをモットーとして生きてきた。しかし、彼女の働き方は社の方針と合わずに情熱が空回りしてしまい、新入社員と衝突。やがて、本人も過労で倒れてしまう。

 産休・育休明けのワーキングマザー・賤ヶ岳八重(内田有紀)は仕事と育児に引き裂かれながらも無理して働こうとするあまり、次々とミスを起こしてしまい、心身ともに追い詰められていく。

 派遣デザイナーの桜宮彩奈(清水くるみ)は正社員ではないという弱い立場に付け込まれ、取引先のスポーツ関連会社の男性社員に飲み会に強引に呼び出されたり、露出の多いスポーツウェアを試着させられたりといったセクハラを受けて心が傷つく。

 今までのドラマなら、桜宮のような女性はセクハラを利用してのし上がるタフで狡猾な女性として描かれ、「女の敵は女」という対立に落とし込まれがちだった。

 しかし、本作は派遣社員ゆえに強く出られない桜宮の気持ちに寄り添い、理不尽な女性差別は許してはいけないと憤る結衣と桜宮の共闘が描かれた。

男性社員たちが抱える問題も、また根深い

 上記のエピソードはどれも踏み込みが深く、見応えがあった。これは、現実の女性の労働環境が理不尽極まりないことの表れだろう。一方、男たちはどう描かれたのか?

 新入社員の来栖泰斗(泉澤祐希)はすぐに「辞めたい」と言い、やる気がない。クライアントのCM撮影現場に立ち会った際に撮影した動画が友人に拡散されてしまい炎上騒動となるが、そのトラブルを通して成長する。

 フロントエンドエンジニアの吾妻徹(柄本時生)は要領が悪く、技術はあるが仕事に対するやる気がなかったが、桜宮彩奈に好意を抱いたことをきっかけに自分の働き方を見つめ直す。

 この2人の悩みは、女性社員と比較するとモラトリアム的で、物語としては薄味だ。これは、日本の労働環境における男女の待遇の差がそのまま内容に表れているからだと、途中までは思っていた。しかし、物語がクライマックスに近づくにつれて、男たちが抱えている問題もまた深刻だということが明らかになってくる。

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