富と名誉を享受し、責任は回避――韓流アイドルたちの暴走【後編】

元KARAハラの自殺未遂は対岸の火事か…宮迫博之“闇営業”問題に見る日本芸能界の闇

2018年9月18日、交際相手への暴行容疑でソウル江南警察署に出頭する元KARAのメンバー、ク・ハラ。(写真:アフロ)

 韓国芸能界のスキャンダルの話題に触れる際、欠かせない視点がひとつある。それは、韓国社会において、芸能人たちが「ひとつの権力」になってしまったという点だ。【前編】にも書いたが、韓国の芸能人は、それまで政治家や財閥だけが持っていたような力を持つようになった。昨今、一般人の間でも、「彼らと我々とでは住む世界が違う」という認識が生じている。韓国人は、犯罪や社会からの逸脱には否定的で非常に厳しい目を向ける。しかし、いわゆる権力層が犯した事件には、驚くほど寛大だ。

「韓国社会では昔から、“法の上に立つ人間”に対してはなす術がないという、『絶望に近い放棄』という反応があります。昨今、芸能人も同じように扱われ始めている。特に2010年頃くらいからは、その兆候が顕著です。そのような社会的意識は、“子どもの頭”と強大な権力とを持った芸能人の悪事を助長する、ひとつの温床になってしまっています」(韓国現地紙記者O氏)

ハラの自殺未遂と女性差別

 スンリやチョン・ジュニョンの事件が発覚し韓国芸能界が揺れ動いている真っ最中の5月26日、KARAの元メンバー・ク・ハラの自殺騒動も起きた。恋人への暴行事件に関連したストレスも、その原因の一端だとされている。

 ハラのスキャンダルは当初、ハラがボーイフレンドに執着したため起きたものと考えられていた。テレビの視聴者や国民は、ハラに暴行を受けたとするボーイフレンドに同情の念さえ寄せた。しかしその後、男がセックス動画を流布させると脅迫していたことが明らかになる。スンリやチョン・ジュニョンの事件とは少し違うが、ハラもまた韓国芸能界のなかで、女性としての弱い立場を男に利用されていたのだ。

「世界の多くの国がそうであるように、韓国も男性中心の社会です。女性芸能人がスキャンダルに見舞われると、二度、三度と傷つかざるをえない。世間は表面上、同情するふりをしますが、裏では『女が淫乱だ』『女性が誘ったのではないか』など、根拠のない批判を浴びせるのです」(前出・O氏)

 いったん世に蔓延したネガティブなイメージは、なかなか払拭することができない。ハラが女性として耐えがたい屈辱を耐え、再びメディアに姿を現した際にも、屈折した非難が溢れた。「眼瞼下垂」という一種の病気を治療しようと手術しただけなのに、美容整形だなんだと、根拠のない悪口の的となってしまったのだ。

 その後、ハラは悪質な性的書き込みに悩み、ついに前述の通り自殺未遂を図る。どうにか精神状態を保っていたが、二度目の衝撃に耐えることができなかったのだ。犯罪被害者であるのに、女性であるがゆえに非難されなければならない。韓国社会および韓国芸能界を取り巻くいびつな構造が、そこにもある。極端な選択をしたハラはどうにか生き残ったが、今後も大きな傷を負って生きていかなければならなくなった。

カラテカ・入江“闇営業”騒動の本質

 個人は社会の鏡だ。アイドルによる相次ぐスキャンダルや犯罪行為は、韓国社会を反映している。逆にいえば、社会全体が一丸となって問題の本質に迫らない限り、韓国芸能界の暗黒面は決して浄化されないだろう。

 そう、韓国芸能界のスキャンダルについて本稿を執筆している最中、日本の芸能界でも大規模なスキャンダルが起きた。吉本興業に所属する芸人複数名が、オレオレ詐欺グループのパーティーに参加。多額の金銭を得ていたという疑惑だ。

 高齢者から巻き上げた金で偉そうにふるまう犯罪集団との付き合いを“人脈ビジネス”と自慢してみせ、吉本興業を解雇となったカラテカ入江慎也に同情の余地がないのは当然のこととして、その場にいたという宮迫博之ら参加した芸人がどのように“接待”されたのかも、明らかにされてしかるべきである。

 今回の事件は、「吉本興業の若手芸人が、食えないため闇営業に走った」というような、いち企業のブラック体質の問題に論点をすり替えてはならない。金を持っていれば、それが仮に犯罪によって弱者から巻き上げたものであっても、称賛してホイホイついていく。そんな、芸能界や日本社会のいびつな構造にこそ焦点を当てるべきではないだろうか。

 韓国芸能界の闇がそうであるように、日本の芸能界の闇もまた、日本社会を映す鏡なのだから。
(取材・執筆=Dan Ryu【韓国紙記者】、翻訳・構成=河鐘基)

【前編】「ビッグバンのスンリ、偉大なる実業家からの転落…韓国社会にはびこる性接待、警察との癒着」はこちら

【中編】「歌手のチョン・ジュニョン、スンリらと“性暴行”を共有…なぜ韓国アイドルは暴走するか」はこちら

河鐘基

1983年北海道生まれ。株式会社ロボティア代表取締役。テクノロジー専門ウェブメディア「ロボティア」を運営。著書に 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」(扶桑社新書)、「ドローンの衝撃」(扶桑社新書)、「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」(光文社)。訳書に「ロッテ 際限なき成長の秘密」(実業之日本社)、「韓国人の癇癪 日本人の微笑み」(小学館)など。

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