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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

『ガンダム』第1作は低視聴率で打ち切り…巨大ビジネスに大化けした経緯は示唆に富む

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer

イノベーションの困難さ

 しかしながら、最初の放送時に視聴率が伸びず、打ち切りになったことは事実である。その理由は、ガンダムがあまりにも斬新、異質であったからだろう。おそらく、目先の視聴率のみを狙うならば、新しさや異質さを抑えるなど、いくらでも策はあったはずだ。だが、そうした場合、ガンダムの独自の世界観は消え、熱烈なファンも生まれなかったと思われる。

 この問題は、短期的利益に注力すべきか、長期的利益を重要視すべきか、という問題ともとらえられる。また、顧客ニーズを重視すべきか、もしくは作り手の思いを優先し、作品としてクオリティ・価値の高いものにこだわるべきか、という側面からも検討に値する。

 極めて難しい問題ではあるが、アニメに限らず、新たなイノベーションにおいて、革新性が大きいほど、消費者が理解するまでに時間を必要とする場合が多い。具体的には、まず新たなものに寛容なイノベーター(革新者)に火が付き、その後、アーリーアダプター(初期採用者)に受け入れられ、大きな市場へと拡大していく。

 よって、大きなイノベーションを擁する商品の場合は長期的視点からマネジメントすることが重要となる。スタートアップ企業の場合は、その期間を耐えうるだけの資金が重要な要件になるだろうし、大手企業の場合は日々コツコツ稼いでくれる商品群と将来、大きな稼ぎ頭となってくれる可能性を秘めたイノベーティブな商品群を組み合わせたポートフォリオのマネジメントが必須だろう。

 もっとも、「新しいものを世に送り出してやろう!」という、スタッフの熱意や意地のようなものが、何よりも重要であることは言うまでもない。
(文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer)

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