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滋賀医科大病院、がん患者270人の治療を突然中止…背景に“医療ミスの隠蔽”か

文=黒薮哲哉/「メディア黒書」主宰者

 不信感を持った鳥居さんは、別の病院を探すことにした。幸いに勤務先の先輩が、岡本医師による治療「岡本メソッド」を受けたことがあるという情報を得た。この先輩に相談したところ、岡本外来を受診するようにアドバイスされた。

 鳥居さんは、主治医に紹介状の作成を依頼した。しかし、主治医はなかなか応じてくれない。これに怒った鳥居さんの妻が病院へ足を運んで、窓口で直談判した。すると、かつて鳥居さんの父親を治療した医師が出てきて、「申し訳ない」と頭を下げて紹介状を書いてくれたのだ。この時点で鳥居さんとこの病院の縁は切れたのである。同時に鳥居さんは、岡本医師に自分の生命を托したのである。手術の日程が決まらない事態は想定していなかった。

病院側の“抗弁”

 今年2月に岡本医師と待機患者の代表7名は、大津地裁へ仮処分を申し立てた。岡本医師と待機患者は、それぞれ異なった視点から治療の延長を求めた。岡本医師は小線源治療学寄附講座(以下、寄附講座)の特認教授という立場を前提に、自らの判断で治療方針を決める裁量権を主張し、待機患者らは医療を受ける権利を主張した。

 裁判所は岡本医師の主張を全面的に認めたが、患者らの主張は認めなかった。認めなかった理由は、病院が事前に19年6月30日で岡本医師による治療の打ち切りを告知していたからだ。それを承知のうえで、岡本外来を受診していたと判断したのである。しかし、岡本医師の主張が認められたことで、待機患者全員が治療を受けられることになった。仮処分を申し立てた目的は達成されたのである。

 決定書は、寄附講座を独立した組織であることを認定した上で、岡本医師に「寄附講座の目的、事業の範囲内で、その内容を決定して実施する裁量権が委ねられている」と判断した。治療をどのような日程で、どのような方針で進めるかを決める裁量権は、原則として岡本医師にあると判断したのである。

 たとえば、病院は抗弁のなかで、手術を受けた患者の経過観察の期間が6カ月必要であるから6月30日で治療を打ち切ると主張していたのだが、裁判所は、最低必要な日数は1カ月で、それ以後は転院先で経過観察を持続することが可能という岡本医師の考えを認めたのだ。

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