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堀田秀吾「ストレス社会を科学的に元気に生き抜く方法」

週休3日制、予備実験で仕事のパフォーマンス向上との結果…チームワークも強固に

文=堀田秀吾/明治大学法学部教授
週休3日制、予備実験で仕事のパフォーマンス向上との結果…チームワークも強固にの画像1「Gettyimages」より

 通勤の満員電車。すごいストレスフルですよね。駅員が客を電車の中に押し込んでいる様子なんかを見ると、「どうして日本社会はみんな同じ時間に出勤するのだろう? ずらせばいいのに」などと思ったりもします。

 ちょうど4月に、厚生労働省が旗を振る一億総活躍社会実現に向けた働き方改革関連法が満を持して施行されました。特に労働時間については、体の疲れやストレスとも深く関わるところですし、働き方改革の目玉でもあります。労働時間の改革については、多くの企業がさまざまな取り組みをしていますね。

 日本もかつては月曜日から土曜日まで週6日間働くのが当たり前でした。最近はやっと週休2日制も浸透し、週5日間働くのが平均的になってきました。では、この週5日間というのは、適切な週の労働日数なのでしょうか?

 この疑問について、ニュージーランドのオークランド工科大学のハーらが企業との連携のもと行なった調査がヒントを与えてくれるかもしれません。この調査では、122人の被雇用者と27人の管理職から得られたデータを基に、賃金は変わらないまま週4日勤務になった場合、どのように変わるかを分析しました。

 企業が被雇用者の福利、および精神衛生や安全を気遣っていると感じたそうです。チームワークにおいても、チームとしての期待、自信、問題対応力、楽観性といった観点から見たチームの強さ、そしてチームの結束力などが強化されました。また、ワークライフ・バランスにおいても、24%の向上が感じられました。

 さらには、仕事のパフォーマンスおよび創造力、仕事の満足度、従事度等の向上も得られたと感じていました。もちろん、ストレスも7%低下するなどを含めた福利の面でも改善が見られました。管理職による評価においても、被雇用者のパフォーマンス面での低下は見られず、時間管理や協力、顧客への対応および創造性においても改善が見られました。

 この研究は、予備実験の段階なので、まだまだ突き詰める必要はありますが、ここまでの段階ではとにかく良いことずくめですね! こういう科学に裏打ちされた制度変更をぜひ自信を持ってやってほしいものです。

「9時―5時」勤務への適合・不適合

 次に、一日の勤務時間について考えてみます。午前9時―午後5時という勤務時間の体系は、先進国においては標準的になっていますし、疑念を抱くことなく私たちも受け入れてしまっています。しかし、早寝タイプの人と夜更かしタイプの人では、この勤務時間体系に適合・不適合があるようです。

 バーミンガム大学のフェイサー・チャイルズらの研究ですが、38人の被験者を対象に、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って脳の活動を記録し、同時に唾液を採取して体内時計を調節するホルモンであるメラトニンやストレスに関わるホルモンであるコルチゾールの分泌状況などを調べました。

 早寝型(午後11時頃就寝、午前6時半頃起床)と夜更かし型(午前2時半頃就寝、午前10時過ぎ頃起床)の睡眠サイクルを持つ被験者に分けて調べたところ、夜更かし型の人は、午前9時―午後5時という一般的な勤務時間は体内時計とうまく合わず、早寝型の人よりも8割以上の領域で脳の活動が不活発ということがわかりました。特に朝は注意力などの認知能力が早寝型の人よりも劣っていました。やはり、早寝早起きの習慣を持っている人のほうが有利なようですね。

 さらには、こんな研究もあります。ワシントン大学のダンスターらは、シアトルの高校生たちを対象にして、午前7時50分に始業のところを午前8時45分にして、腕に睡眠・覚醒のサイクルを計測する器具をつけてもらい、2016年と17年の春学期に実験をしました。

 結果、始業時間を遅らせた場合、約34分間、睡眠時間が長くなりました。また、欠席率、遅刻率も共に減少し、体内時計の調節も改善が見られ、成績についても平均4.5%の伸びが見られました。高校生と社会人は違うという指摘もあるでしょうが、参考になりそうです。

 実際のところ、就業時間の変更というのは難しいでしょうから、まずは早寝早起きの習慣を身につけるのが先決。経営者のみなさんは、午前9時―午後5時というお約束の就業時間の体系を見直してみるのも手かもしれません。
(文=堀田秀吾/明治大学法学部教授)

Haar, J. (2018) Overview of the Perpetual Guardian 4-day (paid 5) Work Trial. Auckland University of Technology. https://static1.squarespace.com/static/5a93121d3917ee828d5f282b/t/5b4e4237352f53b0cc369c8b/1531855416866/Final+Perpetual+Guardian+report_Professor+Jarrod+Haar_July+2018.pdf
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Banks, S., & Dinges, D. F. (2007). Behavioral and physiological consequences of sleep restriction. Journal of clinical sleep medicine, vol. 3,5, pp. 519-528.

Facer-Childs, E. R., Campos, B. M., Middleton, B., Skene, D. J., Bagshaw, A. P. (2019). Circadian phenotype impacts the brain’s resting-state functional connectivity, attentional performance, and sleepiness. Sleep. doi: 10.1093/sleep/zsz033.

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堀田秀吾/明治大学法学部教授

堀田秀吾/明治大学法学部教授

 専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、神経言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。

Twitter:@syugo_h

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