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“国策”MRJ、新規受注ゼロで事業存続の危機…成功したホンダジェットと真逆の発想

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 本来であれば三菱重工は米国の技術者などを登用して、プロジェクト・マネジメントのレベルから最も合理的と考えられる発想を取り込む選択肢もあったはずだ。ところが、国主導でのプロジェクトであるという認識や、“国産”へのこだわりがそうした考えを妨げた。また、日本の防衛機器を手掛ける三菱重工ならではの経営風土も、自前主義への傾倒を強める要因だった。

民間企業の活力の重要性

 一方、日本にはすでに実用化された航空機がある。それは、本田技研工業(ホンダ)が生み出した「ホンダジェット」だ。ホンダは、三菱重工のように大きな組織の下で航空機開発を進めることはしなかった。少人数からなる社内プロジェクトとしてホンダジェットの開発に着手した。まず、1986年にホンダは若手社員を米国に派遣し、最先端の航空機理論や飛行機設計の実務を学ばせた。それを基礎として、同社エンジニアの独自の発想によってホンダジェットの開発を進めた。特に、米国でホンダのエンジニアが、基本的な航空機の設計を学んだこと、ベテランの航空機エンジニアの下で航空機設計などを進めたことがホンダジェット誕生の礎になった。

 2003年にホンダジェットは初飛行を行い、2015年にはじめての機体を納入した。2017年と2018年、ホンダジェットは世界の小型ビジネスジェット機の納入機数において2年連続でトップの座を確保した。

 国のバックアップを得たMRJとは対照的に、ホンダジェットは新しいモビリティ(移動の可能性)を実現しようとするアニマルスピリットに支えられた。国と異なり、民間企業は採算を重視し、利益を生み出さなければならない。資金源にも限りがある。その状況がホンダのエンジニアを駆り立て、ホンダジェットの誕生につながった。

 また、ホンダジェットの国内納入により、日本と海外を結ぶ“新しい動線”が引かれたことも見逃せない。ホンダジェットはビジネスジェットのチャーターに活用されている。このサービスは、定期便が就航していない空港へのフライトを可能にし、乗り換えなどにかかる時間を節約することもできる。民間企業が新しいモノを使って新しい取り組みを進めることが、従来にはない人々の移動を支えると同時に、規制の緩和などを進めることにもつながる。そう考えるとMRJの成功は非常に重要である。

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23:30更新
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