悲惨なポスドク…東大博士号でも非正規、40代で就職活動、夢は中国で研究者

「僕らも研究で一発当てれば生活が180度変わるんです。『ネイチャー』や『サイエンス』といった有名雑誌に論文が載れば、ようやく“メジャーデビュー”。ポスドクたちは研究だけで食っていくことを夢見て、若さと時間を費やしてしまうのです」(同)

 メジャーデビューを夢見て日々研究に専念する宮野さんだが、最近は新たな夢も見つかったという。それは、研究者として中国で就職することだ。

「アメリカで就職できれば一番いいのですが、日本以上の競争社会のようです。東大ブランドも通用しないので、あらゆる意味で実力が試される。なので、まだ日本への幻想が残っているアジアの成長国で就職を考えています。そのなかでも、やはり中国の魅力は断トツです」(同)

 今や、理工系の論文数、研究者数、科学技術予算でも中国が日本を圧倒。豊富な予算を武器に、中国は2008年から「千人計画」と銘打って、世界中からハイレベルな研究者を積極的にリクルートしている。

「学会で中国の若手研究者と話すと、たまに『お金持ちになりたいから研究者を目指している』と言う人がいて驚きます。日本では、研究者はわりに合わない仕事だとみな知ってますから(笑)。中国では研究者は社会的ステータスが高く、若者が夢を持って挑戦できる職業だそうで、そういった立場にも憧れてしまいます」(同)

日本のポスドクの“唯一のメリット”とは

 宮野さんは、「日本のポスドクにもひとつだけいい点がある」と言う。

「それは研究に専念できることです。もし大学の正規職のポストに就けば、講義やプロジェクトのマネジメント、資金集めの書類作成で7~8割は時間を取られてしまいます。研究だけに没頭して日本のサイエンスを支えているのは、ポスドクなんです」(同)

 事実、山中伸弥氏が所長を務める京都大学iPS細胞研究所のスタッフも9割が非正規雇用で、多くのポスドクが働いている。研究の最前線で手を動かし、頭を働かせているのはポスドクなのだ。

 宮野さんは、「せめて普通に若手研究者が暮らしていける環境にしないと、誰も日本で研究者を目指さなくなる」と警鐘を鳴らす。

 日本人がノーベル賞を受賞するたびに国中がお祭り騒ぎとなる。しかし、過去の受賞者が異口同音に訴えるポスドク問題にまで耳を傾けなければ、日本からノーベル賞受賞者を輩出できなくなる日も近いだろう。

(文=奥田壮/清談社)

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